Section33 秒針の音

 何もない部屋に、秒針の音だけが響いた。


 どうしようもないのは、誰のせいでもないし、誰のおかげでもないから。


 だけど今ここで秒針の音なんか聞いていると、私はなぜだか寂しい気持ちになったりして。


 いろんなものから逃げるようにして、ここまで来た。


 それは私が望んでいたはずなのに、今はどうして悲しくなってしまうのだろう。


 秒針の音は、嫌なくらいリアルに時間の流れを感じさせて、私の身が少しずつ剥がされていくようだった。


 そんなに、なぜ、そんなに感じなくてはイケナイのだろう。


 私は、今、私は、今、どこにいるのだろう。


 秒針の音は、ただ儚く、ただ静かに、ゆっくりと時を刻むだけで、何もしてくれない。


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