Section11 珍しき自然災害
「台風が近づいてるってよー!」
リビングでテレビを見ていた母の声が、自分の部屋にいた私の元まで届いた。声量から言って、私へ向けた言葉であるのだということは容易に分かる。
「そーなの!」
私はなんとなくその言葉に答えてみたけれど、台風が近づいていることくらいは私だって分かっていた。ニュースくらいは一応目を通しているのだから。
台風がこの町に来るなんてもう随分と久しぶりなんじゃないだろうか。私が覚えている最後に来た台風は、もう十年以上前だと思う。その台風だって、確か二十年ぶりとか言っていたような……。
そんな町だから、台風に対しての考えが甘い。
皆大して危機感なんて感じていないけれど、なんだか少し浮かれているような。
なんだかお祭りに行く前みたいな感じで、私は少し不服に感じられた。
「学校大丈夫かしらー?」
母の声はまた私に向けられていたけど、私はその言葉に答えなかった。
大丈夫かどうかは分からない。
今は、その台風が来るのをじっと待つことしかできないのだから。
私が窓から外を見上げると、いつもより雲の流れがずっとずっと早かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます