Section5 すぐに終わるから

 「ほら、すぐに終わるから目を瞑ってて」


 カオリはそう言いながら、僕の手を取った。


 「なに?なにするの?」


 目を閉じるだけで感じられる、不可思議な不安の中に僕はいて、そしてなぜだかほんの少しの期待感が混ざっている。


 「いいから、ちょっと手を開いて」


 カオリは僕の手をゆっくりと開く。その温もりを感じながら、僕はぴっと目を真っ直ぐに閉じたままでいたのだ。


 どうしてこんなにもカオリの手は温かいのだろう。


 そんなことを考えている内に、僕の手に何かを握らせたカオリが「目を開けていいよ」と言った。


 僕はゆっくりと目を開け、自分の手をゆっくりと開く。


「そんなんじゃ恥ずかしいでしょ?」


カオリはそう言う。僕は自分の手のひらにあるヘンテコリンなキャラクターのキーホルダーを見ながら、自分の携帯に付けられた、キャラクター不在のひもだけが付いたそれを思い出していた。


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