舞台設定・補足


魔瞳石まどうせき

 幻住が、自らの力の一部を結晶化させたもの。蒼く透き通った宝石のようになり、蒼魔瞳石あおまどうせきやクリスタルとも呼ばれる。

 魔瞳まどうの力が封じ込めてあり、これを使えば一時的に幻住と同じの力を発現することができる。長持ちはせず大抵はすぐに壊れてしまうが、限られた精製技術を用いれば、武器に備え付けることも可能となる。

 かつては稀少な石だったが、今では帝国が魔瞳まどう技術により生産を可能としている。自然生成されるはずのないこの石を、なぜ帝国が作り出せているのかは不明。帝国製の魔瞳石まどうせきは、血のように濁った赤い宝石のようになっている。

 帝国製の機関エンジンは、原動力にこの赤魔瞳石あかまどうせきを用いていることもあり、通常の機関エンジンとは異なる大きな力や特異な性能を誇る。


魔瞳器まどうき

 特殊技術で精製した魔瞳石まどうせきを備え付ける、強力な武器。生命エネルギーを吸い上げてその力を増していく性質を持っており、壊れても勝手に修復するなど、御伽噺めいた事象すら引き起こす。ある種の意志をも宿しており、持ち主の弱い心を揺さぶり、戦いと血を求めて武器を振るわせようとする。

 自然の摂理に反する異常な力を発揮するためか、使い手もまた闇の幻想に魅入られ、怪奇な現象と遭遇するようになると言う。

 死神に命を狙われるだとか、竜に憎まれるだとか。ひととしての性質を失って怪物に変貌してしまうだとか。そういった噂。そういったオカルト。

 魔瞳器まどうきの作成技術は、現在では失われて久しい。現存している数もわずかであり、その多くは封印されているか、力を失って使い物にはならないと言う。

 けれど、けれど。

 帝国の魔瞳まどう技術は、この魔瞳器まどうきすら復活させた。数は多くないものの、帝国兵の中には赤に輝く宝石が搭載された魔瞳器まどうきを、悪夢のごとく振るう者もいるそうだ。

 あるいは世界のどこかでは、その秘技を受け継いだ鍛冶師が密かに暮らしているとも言われている。


魔瞳書まどうしょ

 魔瞳石まどうせき以上の力を秘めているとされる、幻の書物。どこにあるのか、そもそも実在するのか、すべてが謎に包まれている。

 帝国が秘密裡に、わざわざこの本のための捜索部隊を結成し、血眼になって探し回っているとか。とある作家の描く本だけが、魔瞳書まどうしょになるとか。魔瞳書まどうしょだけを売っている謎の露天商がいるとか。古の書物を集めた幻の図書館に、この書物が秘蔵されているとか。

 そういった噂。そういったオカルト。


▼ひとは死ぬと鉄塔になる噂

 言葉の通りの、奇怪な噂。

 種族に関わらず、死んだ者は鉄塔になるという。単なる鉄の塊ではなく、様々な機関エンジン仕掛けを備えた機械の塊。蒸気を噴き出したり、電気を蓄えたり、炎を宿したり。鉄塔機関タワーエンジンとも。

 産業革命を起こし機械文明を発展させたのも、この奇跡によるものだという。ひとがゼロから機械を生み出したのではない。ひとそのものが機械になったのだ。そういった噂。そういったオカルト。

 もちろんどの種族も、死んだら鉄塔になるなんてことは、ない。ありえない。そんな御伽噺のようなこと。

 けれど、けれど。

 そういった奇跡が起きたという事実は、存在する。わずかながら。でも確実に。

 とある記者が残した取材ノートには、こう記されている。

 帝国に住む子供が、こんなことを言ったそうだ。


「死んだら機械になれるんだ。ぼくにはそういう資格がある。死んだら鉄塔機関タワーエンジンになって、帝国の発展に貢献するんだよ。だから死ぬのなんて怖くない!」


 この記事を発表しようとした記者は消息不明となり、連絡が取れなくなったという。


▼世界滅亡の噂

 帝国は魔瞳まどうの力を振りかざし、圧倒的な軍事力で各国を占領下に置いている。

 旧い歴史を知る研究者は、その様を見て世界の滅亡を予見したという。


「やがて 恐怖がすべてを覆う それは 宇宙の法則を乱し 世界のあらゆる決まりごとを 崩壊させるだろう」


 発狂した研究者は精神病棟に入れられたものの、そこを脱走して行方不明になったらしい。

 そういった噂。そういったオカルト。

 本当に、世界が滅亡するなんて。そんなことは在りえないし、誰も信じてはいない。

 誰も、誰も。

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