舞台設定


▼基本的な世界観

 細かい部分に違いはあるものの、私たちプレイヤーが暮らす現実世界における、19世紀末(ヴィクトリア朝)のロンドンに似ている。前時代的で品のある、レトロっぽい雰囲気とアンティーク感の漂う文化が特徴。


 石畳の街並みを行き交うのは、豪奢な馬車に乗り、クラシカルな衣装に身を包んだ上流階級の紳士や淑女、あるいは中流階級の企業家や学生たち。

 中流~下流市民でごった返す雑踏街では、威勢のいい掛け声が飛び交い、荒々しい喧騒で溢れている。不潔で野蛮にも見えるそれは、飾りっ気のないたくましい生命力の表れ。

 郊外へと足を伸ばせば、そこはいまだ豊かな自然が残っており、緑溢れる荘園や農村などが見られる。わらや農作物を満載した荷車が動物に引かれる姿や、一面に広がる草原の向こうまで続くわだちなど、古めかしくもあたたかい牧歌的な光景を目にすることができる。


 そういったこの世界では、歯車と蒸気の力によって稼働する機械装置<機関エンジン>が存在し、人々の生活に溶け込んでいる。

 機関技術が生み出したものは、自動車ガーニー、機関車、火力船、飛行船舶、自走式一輪バイク……蒸気を吹き出す機巧鎧や、人間そっくりの姿をした機械人形オートマタのほか、篆刻写真てんこくしゃしん印刷機、蒸気通信機、階差機関と呼ばれる大型情報処理機械など数多におよび、文明の発展に貢献してきた。


 そうした機械文明の片隅には、辺境の迷宮に巣食う魔物や、独特の文化を形成した異形の種族たる<妖魔>、御伽噺に伝わる幻想生物の存在なども垣間見える。


 鉄と火薬と石炭と蒸気が生み出す、レトロでクラシカルな浪漫が溢れるこの世界。

 そこを彩る色合いは、瓦斯灯ガスとうが放つあたたかな灯火。黄金のごとき真鍮の輝き。色褪せた皮の茶色。黄変した紙片の古めかしい色……そして幻想世界の住人が散らす鱗粉のような蒼の煌めき、蒸気を噴き出す異形機械に灯る赫々かっかくとした赤の光。

 レトロ&アンティークの情緒に幻想をそえた世界が、当PBWのメイン・イメージでもある。



幻住げんじゅう

 御伽噺で語られるような神秘の力を操る、伝説の種族。魔瞳まどうと呼ばれる瞳を持つ。

 人々にその力の一部を分け与えながら、共に仲良く暮らしていた。


「こことは違う、異質なるどこか。幻の世界に住んでいたものたち」という意味を持つ。

 人間と変わらない姿かたちをしている者もいれば、小人や巨人、動物、あるいは道具や機械の形をとっている者もおり、その姿は千差万別。

 ひとと幻住げんじゅうとは異種族であり、生殖により子孫を残すことはできない。しかし幻住げんじゅうとの間に、強い精神的結びつきを育んだ人々の中には、「謎の鳥が布にくるんで赤子を運んできた」「生じた光の中から赤子が誕生した」等の幻想的要素を経て、子を授かる者もいたようだ。

 そうして幻住げんじゅうとのハーフとして命を授かった子は、生まれつき魔瞳まどうの特徴を有し、幻想の力を操ったと記されている。


 しかし幻住げんじゅうたちは、旧時代に勃発した大戦によって何らかの問題(詳細不明)が発生し、魔瞳まどうがもたらす力と共に人々の前から姿を消してしまった。

 長い時を経て機械文明が浸透した現在では、幻住げんじゅうの存在は御伽噺で語られるだけの幻であり、非科学的なインチキだったとさえ言われている。


 魔瞳まどうを持ち幻想の力を操る、異世界の住人、幻住げんじゅう

 彼らはもう、この世界に存在していない。

 ……少なくとも、表向きには。


 世界のどこかでは、今でも幻住げんじゅうが現存しているという噂が囁かれている。

 発展を遂げた炭坑都市の地下では、氷づけの幻住げんじゅうから魔瞳まどうエネルギーを取り出しているとか。辺境の村では、かつて幻住げんじゅうから借り受けた魔瞳まどうの血脈を今もなお受け継ぐ、<魔瞳士まどうし>が隠れ住んでいるとか。幻住げんじゅうを信仰対象として密かに崇め奉り、今でも共に暮らしている集落があるとか。

 そういった噂。そういったオカルト。



魔瞳まどう

 幻住げんじゅうが持っている特徴のひとつ。たかぶると輝きを放つ、魔法の瞳。幻住げんじゅうはこの瞳を通じて、まるで御伽噺めいた神秘の力を発現させる。

 機関兵器を超える破壊をもたらすこともあれば、怪我を治癒することもできる。幻影を見せたり、物質を生成することも可能。膨大な数式を瞬時に解くような情報処理能力を発現することもあれば、見えない存在やひとの心を感じ取るなど、様々な顕れ方をする。

 いずれにせよ、発達した機械文明と同等か、それ以上の現象を引き起こす。


 もとは幻住げんじゅうだけが持つ特徴だったが、幻住げんじゅうと盟約を結ぶことでこの瞳を血脈として受け継ぐ者や、前触れなく魔瞳まどうを発現させる者もいた。

 そうして、異質なる力を振るう瞳を得た者は、人々から<魔瞳士まどうし>と呼ばれた。


 大多数の人々が、魔瞳まどうの力を御伽噺のようにとらえている。ありえないもの、空想上のもの。お話の中にしか存在しない幻である、と。

 けれども魔瞳まどうの力は、今でもひっそりと、世界のどこかで、未だ息づいて。


 一方で<帝国>は、幻住げんじゅうの消失とともに失われたはずの魔瞳まどうを復活させたと言う。



▼帝国

 突如、全世界に宣戦布告をすると同時に、侵略戦争を仕掛けてきた軍事国家。

 幻住げんじゅうと共に失われたはずの魔瞳まどうや、過ぎた力であるとして復興と同時に廃棄されたはずの魔法の鉄釜を復活させており、それによって手にした強大な軍事力を誇る。

 機関技術と魔瞳まどう研究の結晶である<魔瞳まどうアーマー>が主力兵器で、これに搭乗した者は、並の人間や機関兵器では歯が立たないほどの戦力を獲得することができる。


 現在、世界各地では帝国の侵略に反抗する戦いが繰り広げられているが、状況のほとんどは帝国の優勢。既に敗北を喫し、支配下に置かれてしまった国も多い。

 辺境の街や村にも戦火が及ぶのではないかと、人々は不安にかられている。


 周辺国家との戦争状態に突入してから数年が経過するも、帝国の真意は不明。世界征服を掲げるその裏に、どのような思惑があるのか。前線で戦う兵士や将軍たちも、それを把握してはいない。

 けれど。けれど。

 命令とあらば従うのが掟。旧くから国に仕える忠義のために。あるいは家族や恋人を守るために。


 各地では反・帝国を掲げる抵抗組織も活動を活発化させており、また帝国内部でも反乱を企てる声が上がっているという。

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