業物演武 史上最強名刀決定戦
京正載
壱 キツネ、バカをバカす
第1話 壱の1 ど天然霊感少女 敦子とプリン
は、初めまして。私は山城敦子といいます。
高校3年生の牡牛座、スリーサイズは、え~と、その………内緒ってコトで。
趣味は特に………………あ、すいません。私ばっかり喋って。どうぞ、そちらもお話しください。
……………………そ、そうでした。読者の方はこちら側に話しかける事ができないんでしたっけ。
私って昔からそうなんです。家族からも友達からも、空気読め子とかIQ78星雲から来たウワノソラ星人だとか、天然怪獣ボケノドンとか言われて、そのくせ怒る前に上手いコト言うなと関心してしまって、後から落ち込んじゃってと、こんなコトばっかり。
ホント、私って……………、ああ、いけない。また脱線してしまいました。話しを本題に戻しますね。ホントすみません。
何て言いますかその、霊感体質って言うんですか? 信じてもらえないかもしれませんけど私…………………幽霊が見えるんです。
そりゃもう「うそっ!」てくらい、バッチリと見えてしまうんですよ、いや、ホント。
見えるようになったのは多分、小学校4年生のときに、狐に憑かれたのがきっかけだと思います。
そのときの記憶はあまり残っていませんけど、後で聞いた話しによると、狐に憑かれた私は、奇声をあげてパンツ一枚で近所を走り回ってたと、親戚のおじさんは、何故か笑いながら言ってました。(おじさんはウソを言ってるんです。絶対にウソですっ!)
と、とにかく、本当に私には幽霊が見えてしまうんです。町中を見ても、信号待ちをしている事故死者や、ずっと神社の周りを行進している日本兵、映画みたいに、頭に弓矢が刺さったままの落ち武者もよく見ますし、クラスメートの中にも、背後霊が憑いている人が数人いて、授業中はまるで参観日のようです。
普通の人なら怖くてもう授業どころではないのでしょうが、さすがにもう慣れっ子になった私だと、そんじょそこらの幽霊ではもう、ビックリもしません。
あ、でもホラー映画とかはダメです。あっちの方がマジ怖いです。
で、そんなある日のコトです。私はいつもとちょっと違った幽霊を見てしまいました。
何とその幽霊…………………他の幽霊相手にチャンバラをしてたのです。
それはある日曜日の夜のコトでした。
明日からまた一週間のだるい学校生活かと思うと、気分は南国の海より、零号機パイロットの髪の色よりもブルーです。
もはや死刑宣告された受刑者の心情です(え、私だけ?)。
そんな気分のままモヤモヤしていると、急にプリンが食べたくなった私は(いえ、プリンは好物なので、年中食べたいんですけど)、近所のコンビニまでママチャリで猛ダッシュで出かけました。私としては、ホントは上にクリームが乗ったのが欲しかったんですけども、あいにく売り切れだったので、代わりに3連プリンか大きいのにするかで悩んで………………………って、ああ、すみません。
と、とにかく、プリンを買った帰り道、ふと近くのビルの陰の路地裏を見ると、えっ、プリンですか? 結局大きい方を買いました。
ガッツリ食べたい気分だったので、っじゃなくて、ふと路地裏を見ると、え~と、カッコよく言うと対峙、って言うんでしょうか?
刀を持って睨み合う2人の幽霊がいました。
一方は時代劇で見るような若い侍姿。背中に×の字に襷がけをして、刀を真正面に構えています。
そしてもう一方は、見た目は二十歳ほどで白い作務衣か、道着のような服装をしていました。髪はボサボサで野生児っぽい雰囲気があり、切れ長の吊り目が特徴的な私好みのイケメンです。そして持っていた刀は、白鞘というらしいのですが、五右衛門の斬鉄剣のような、木製の柄と鞘だけの刀でした。
両者はしばらく睨み合った後、侍姿の方が先に仕掛けてきましたが、イケメン、いえ、私情で応援してはいけません。ごめんなさい。とにかくもう一方は、それを難なく躱し、目にも止まらない早さで、相手の刀を叩き落してしまいました。まさに一瞬の勝負です。
負けを認めた侍さんは、まるで成仏でもしたかのように、その場で溶けるように消えていきました。イケメンさんもそれを見送ると、刀を鞘に納め、そのままどこかに行ってしまうのかと思っていると、
「ん?」
(………………あ、やばっ!)
迂闊にも、イケメン幽霊と目が合ってしまいました。
前にも言いましたが、私はかなりの霊感体質です。悪霊に取憑かれやすいのです。
狐や狸、下手すればカブトムシの幼虫にだって取憑かれかねません。
いくら相手がタイプのイケメンだからって、取憑かれたくはありませんから、私は気付かないフリをしました。
しかしさすがは幽霊です。地面を滑るようにスーっと私の前までくると、凍るような、そして刺すような静かな声で、
「お姉ちゃん、もしかして僕のコト、見えてる?」
と、聞いてくるではありませんか?
もちろん、答えるわけにはいきませんが、私は無意識に首をブンブン、左右に振ってしまいました。振った後で自分の愚かさに気付き、
(バカッ、分かってたけど、私ってバカッ!)
額から脂汗がダラダラ出てるのが、自分でも分かります。それでも幽霊はこっちを見つめ、
「ホントに?」
今度は首を縦にコクコク振ってしまい、
(もうダメだぁぁぁっ!)
と、心の中で絶叫。
「………………………………」
(………………………………)
「あ、千円落ちてる」
「えっ、どこどこっ?」
思わず地面に視線を落として、辺りをキョロキョロ見渡すと、首筋に冷たい刀身が添えられました。
「あああーっ、もうお仕舞だぁっ!」
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