永遠の旅立ち

流民

第1話


少し昔の話し……


私の名前は『航海者』と言うらしい。

もう30年以上旅を続けている。

私の産まれた所はもう遥か遠くになり、姿を見る事も出来ない、しかし今も私は手紙を

送り続けている……

今から30数年前の夏に私の旅は始まった。

旅立ち当初、私は口と耳に障害をもったままの旅立ちになってしまった。

だがそれはいろいろな人達のおかげで正常な状態に戻りなんとか旅を続ける事ができた。それから私は最初の目的地を目指して孤独な旅を続ける事になる。


私には兄がいる。

私よりも16日遅く旅だった。

当初同じ日に旅立つ予定であったのだが兄の方にもトラブルがあり予定より遅れての旅立ちとなった。

 予定より遅くの旅立ちとなってから兄とは連絡を取っていない。

 兄は今私よりも遠い遥か彼方の所を旅している。

 出発してから1年10ヶ月と19日後、私は最初の目的地に到着した。

 最初の目的地で私は新たな発見をいくつかした。

そしてその発見のすべてを詳細に手紙に記し送り続けた。


 最初の目的地には兄も向かっているはずであるが、兄は四ヶ月前にここを旅立ち、次の目的地に向かっているらしい。

ここでは兄との再会は果たせなかった。

次の目的地では兄と再会できるだろうか……

再び私は次の目的地へと向かい旅に出る事になるまた長い旅が始まる。

私と兄は同じ物を持っている。それは『金のレコード』と呼ばれている物で、中には

いろいろな科学情報やさまざまな言語、それにいろいろな音楽等を納められた物だ。

しかし私はこれを誰に渡せば良いのかを私は誰からも教えてもらえなかった。

まだ見ぬ誰かへの贈り物を抱えて私は旅を続けている。

届ける先が何処にあるのかも教えてはもらえなかった……

私の旅はまだまだ始まったばかりだった。


そろそろ次の目的地に到着する。

もう目的地はすぐ目の前に見えている明日には到着するだろう。

前の目的地からここまで2年1ヶ月と16日、私は第二の目的地に到着する。

私はここでも観測を行いいろいろな発見を手紙に記し送り続けた。

兄はここにも来るはずであったが、私が到着する9ヶ月と13日前に到着し、そこから

は更に長い旅に出ているようだった……

おそらく兄とはもう再会する事は無いだろう、兄もまたどこかで、誰かに出会う為の旅を続けている。

私もまたその旅を続けていく事になる。

まだまだ長い旅は続く……

本来私の旅は前回の目的地で一応終了する予定だった。

しかし強い要望と、出発時期が良かったという事もあり、更なる目的地を持つ事となった。

前回の目的地よりも更に遠い、遥か彼方を目指し旅を続ける事になったのだ。

そこでの新たな発見を私はまた手紙に記し送り続けることになる。

しかし目的地が増えた所で最終的な目的地に比べると、遥かに短く、ほんの少しの寄り道を行うだけに過ぎない。


前回の目的地から4年と5ヶ月後三番めの目的地に到着した。ここでもいつもの通り新しい発見をし、それを手紙に記し送り続けた。

しかしどの目的地もそうだが私はけしてその目的地に降り立つ事は無い、必ず遠くから観察しそれを報告し立ち去るだけで、私は一度もその地に足を踏み入れた事は無い。なぜなら、私は一度その地に降り立ってしまうともう二度と旅に出る事が出来ないからである。もしかするとそこには私の最終的な目的地になる所があり、そこには『金のレコード』を渡すべき誰かがいるかも知れない、だが私はそこの地に足を踏み入れる事は無い、なぜなら観測し手紙をだして報告すること。それが私の旅の一つの目的であり、それ以外の事は何も教えられていないからである。


私の旅の事を人々はグランドツアーと呼んでいる、それは今だかつて、私が目的地とする四つ以上の地を観測する事は私が初めてだったからである。そして前回の目的地もそうだが次の目的地も、私以外の誰も訪れた事のない所だった。ではなぜ私が初めてだったのかというと、私が訪れた地の配置にある。旅をして観測するのに、もっとも良い配置の状態は、約175年に一度しかない。前回の時は私の様な観測は技術的に無理だった。そういう事もあり私は初めて四つの目的地を一人で観測した唯一の者となった。さてそろそろ最後の目的地に近づいてきた。新たな発見をまた手紙に記して送り続けなければならない。

最後の目的地に到着した、前の目的地から3年7ヶ月と1日そして、出発してから12年と5日がたっていた。


この地でもいつものように新しい発見をしそれを手紙に記し、送り続けた。そして私はある計画を実行する事にした、これは誰かに言われてやる事ではなく初めて私の意思でやる事だった。それはある贈り物をこの地に置いていくという事であった。贈り物の中身は言えない、だがこの後この地に来るであろう誰かがこの贈り物を開けて見るであろう事を願って、この最も遠い地に贈り物を置いていく……そして最後の目的地を後にして私は遥か彼方の地を目指して旅に出る事になった。

これが『航海者』の私の半生である。私はまだ旅を続けている、それは私の最後の目的を果たす為の旅だ、後何年旅をするのかはわからない。後20年もすれば私は機能を停止するだろう、しかしその後でも私の旅は続いていく、私の躯に付いた人々からの贈り物を届ける為に、私は暗い宇宙を永遠に旅する。ああ、地球はもうあんなにも遠くて観る事もできない、さようなら地球。願わくば最後に訪れた地、海王星の贈り物が見つかる事を祈って……

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