茜空
八雲 うみ
第1話
夏にしては、澄んだ朝だった。
いつもの蒸し暑さが嘘のように、どこかひやりとした風が手足を撫でた。
例にもれず高台にある高校へ行くには、きつい坂を登らされる。それを悪く言う人もいるし、将来的にはいい思い出だと言った人もいる。
どちらも正しいと思う。
この坂は夏には汗を掻かせるし、冬には雪のせいで滑りやすい。いい事ないと言うのも分かる。
そして逆に、いい思い出だと言うのも面白いと思った。
大人になるにつれ、坂を登ることに限らず砂埃を立てながら同級生と足の速さを競い合うこともなくなる。
こんなきつい坂でさえ、この高校に通う十代の自分でなければ味わえない思い出、つまり後の人生において"意味あるもの"になるのだろう。
私は、この二つの意見に対して同意こそすれ絶対そうだと推す事はしない。
それをすると、私のモットーである中立的と言うのは守られかなる。
大多数の意見は勿論、少数の意見も同意はする。それぞれの言い分や、考えを確かにそうだと納得する。
けれども、それを必ずどちらか選べなどというのは違うと思う。
例えば人を避け人から外れようとも、その人が
人である事に変わりはない。
大多数だろうが少数だろうが、根本的なところは似ているものだ。
まぁつまり言いたいのは、私は八方美人な部類の人間だと言う事。
茜空 八雲 うみ @Yakumo773
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