第100話 吾輩『いちごぱんゲリラ戦争』を終わらせる

吾輩は目を覚ました。こうもりが話しかけてくる。

「旦那、お目覚めですか?」

「・・・ついに決着の時が来た・・・」

「なんのことです?」

「でかけるぞ!!復讐だ!!」

「復讐?」(あなた、ぼっちです。相手がいません・・・・)


吾輩は中が赤いマントに身を包み出かける。ばさっと音を立て。

かっこいい。吾輩。


坂の前でセットする。

「では、よろしく」

「嫌です」

「えっ?」

「疲れますから・・・ご自分でどうぞ」


なんだと!?蝙蝠なんとか使えないのか・・・。アトラクションの休止というのも考慮せねばいけない。心臓が破られるやもしれん。そんなことを考えながら坂を上っていく。

「旦那、今日はどちらへ?」

「決まっている!!あそこだ!!」

「あそこ?ダイクソ~ですか?」

「違うーーー!!そっちじゃない!!いちごぱんだ!!」

「あっ・・・そっちですか」


吾輩はパン屋の前につく。決意を固める。今日という日を忘れられない日になるだろう。

人の好物に毒を盛る、悪しき輩を成敗する日だ。決着をつけてやる!!


パン屋のドアを強めに開ける。

「いらっしゃいませ~」

「来てやったぞ!!」

「お待ちしておりました」


いつも通り、女子高生が迎え入れる。なかなか、肝が据わっている。敵を笑顔で迎え入れるとは・・・。さぁ、戦争を始めよう。

「おい、小娘!!」

「なんですか?いちごぱんなら、そちらに・・・」

「お前、この前毒を盛ったな?」

「毒?」


とぼけてやがる・・・。首を45度傾けて、はてなマークが見える。こやつ・・・。

「旦那、何を言ってるんです?」

「この前、いちごぱんを食べたら下痢に襲われた!!」

「えっ!?」

「これは食品衛生法違反だ!!営業停止だ!!」

「・・・」


女子高生の目が水であふれてきている。あれ・・・。罪悪感が。

「・・・ごめんなさい」

「あの、いや、その吾輩、」

「旦那・・・最低です」

「吾輩、反省します・・・違う。おいしすぎて、下痢して危ない。営業停止だと・・・」

「・・・へ?」


あぁ、心にもないことあることをしゃべっている。困った。

どうしよう、どうしよう。

「ホントですか!!」


にこやかな笑顔で高校生が話しかけてくる。

「ホントだ・・・吾輩は、嘘は言わない・・・」


嘘です。めっちゃ言います。嘘。もう、この発言自体が嘘です。

相手の目に溜まった水が退いていく、ひと安心だ。

「とりあえず、いちごぱん貰うぞ」

「はい!!」

「それにしても、いつもガラガラだな」


そうだったのだ。吾輩がいくと他の客がいない。いつもそうだ。

「あんまり・・・売れなくて」

「そうか・・・吾輩も売れない男だ」

「ふふふ、なんですか?それ?」

「旦那、その通りです!!」

(こやつ・・・)


女子高生への、罪悪感か少しおしゃべりしてしまう。

「吾輩の書いてる小説も売れない・・・まったくな」

「そうなんですか・・・お互い大変ですね」

「お前、バイトだろう?」

「違います!!店長です!!」

「へっ?」


あれ・・・。女子高生って・・・店長できんのか・・・?法律的にどうなのだろう。

と考えていると、話しかけてくる。

「親がいなくて・・・残されたこのパン屋だけが私の生きがいなんです。」

「そうか・・・お前も両親を亡くしているのか」

「吾輩さんもですか!?」

「あぁ、ぼっちだ」

「ふふふ、私もぼっちです」

「ひとりぼっちが二人で・・・ふたりぼっちってところだな」

「そうですね♪」

「この店のいちごぱんが売れないなんて・・・世の中見る目がないやつが多いな」

「・・・ありがとうございます。」


女子高生店長がもじもじしながら、聞いてくる。

「吾輩さん、お名前は?」

「アインツだ」

「私はいちごって言います!!」

「?」


吾輩は店の外に出ようとすると、また笑顔を向けてくる。この前とどうよう。

「また、来てください!!お待ちしております!!」

「あぁ、金づるだからな!!また、来るよ」


帰り道、セバスチャンと話しながら帰る。

「旦那、かっこつけてました?」

「何の話だ?」

「泣かせようとしたときはびっくりしましたよ・・・外道って・・・」

「あぁ・・・危なく外道になることだった。それにしても名前がいちごって・・・」

「なかなか、ファンシーですね」

「ほんとだ。親がいかれてるのだろう。」

「旦那の親父もいかれてましたけどね」

「あぁ、立派なくずだったよ・・・あの男は」


そんな、話をしていると吾輩は屋敷についた。


≪つづく?≫

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