毒舌勇者とロリ魔王

夏樹

第1話 元勇者と元魔王



魔王率いる悪魔が存在する世界ー……。


人々は悪魔の脅威に晒されながら生きてきた。

そして、世界の果ての大地にはその悪魔たちが住んでいた。その大地の果てにある大きな漆黒の城。

そこは魔王アヴィス・エリスが住む魔王城でもあった。

そんな魔王城最上階【魔王の間】。

今、そこには人類の存続をかけた最後の戦いが始まろうとしていたー。

「愚かな人間どもめ…妾に勝てると思っておるのか?」

スミレ色の長髪に琥珀の瞳。豊満で色香を醸し出すグラマラスな身体にそれを包む漆黒のドレス。そして…濃紫のツノ。魔王アヴィス・エリスは絶対的強者に挑んだ哀れな弱者にんげんに艶やかに微笑んだ。

敵対するように立つのは5人の魔王討伐隊。俗に言う勇者一行だった。

「俺たちの未来のために…負けることは許されない‼︎」

金髪碧眼の勇者は剣を構える。仲間たちも共に武器を構える。

アヴィス・エリスは嘲笑するように微笑むと右手を勇者たちに向けた。

「ならば妾はそなたらのような愚かな存在を滅ぼすため全力で滅ぼすのみ‼︎」

「うぉぉぉぉぉぉぉおっ‼︎」

世界の命運をかけた戦いは数日に及び…絶対的強者である魔王が討伐され、人類は悪魔の脅威に脅かされる日々から解放されたのだった……。







「って、そんな都合よく終わるわけないのにね。馬鹿な王様」

人間が住む大陸のとある王国。

王都から数十キロ離れた国の郊外にある草原の小さな丘の小さな家で。

王道主人公のようだった勇者は魔王との戦いを伝記にした本(魔王討伐依頼をしてきた王様から届いた)を読みながら、小馬鹿にしたような悪い笑顔で笑う。

「おい、レヴィン‼︎本なんか読んでないで手伝えっ‼︎」

そんな彼、レヴィンを叱るというか威嚇するように洗濯物を持った幼い少女が睨みつける。

スミレ色の長髪に琥珀の瞳。それはまぁ…まな板のようなボディは悲劇的なくらいに残念感を醸し出していた。

そう…その少女こそかつてのグラマラスボディをほしいままにしていた魔王アヴィス・エリスである。

そんなエリスに向かってレヴィンは嘲笑する。というか見下した眼でくすくすと笑う。

「お前が俺にそんな口きいていいと思ってるの?ロリ魔王」

そう…今の現状は、元勇者の家に元魔王が暮らしている。匿われているのだ。

つまり…エリスが逆らえば今すぐ討伐するぞ★という脅しを含めていた。

「貴様がこのような姿にしたのだろうに‼︎」

しかし、エリスは食ってかかる。そんな逆らうさまを面白がっているレヴィンはわるーい笑みを浮かべながらプライドが無駄に高いエリスにトドメの一言を放った。

「あ、間違えた。魔王サマ?」

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ‼︎」



かつては敵対し合う仲だった2人。

どうしてか今は、一緒に暮らしている。


これは…世界の命運を掛けた戦いの……その後から始まる2人の非(?)日常ライフの物語ー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る