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「1日体験って、申請とかいる、の?」
「いえ。ただ当日、朝の8時間までに神殿前に集まればいいだけですよ。以前は申請するようにしていたみたいですけど、そうすると申請を面倒くさがってしまって。大幅に参加者が減ってしまったそうなんです」
紅茶淹れてきますね、と空になってしまった2つのティーカップを持ってテリアが店の奥に下がる。静かになった店内でカチカチと時計の針が小刻みに音を立てる。この店の、忙しくない、ゆっくりした雰囲気が咲也子は好きだった。
それと同時に、咲也子の頭の中で明日の予定と明後日の予定、
(明日は
比較的人間嫌いな
ことりと音がして、咲也子が目を開けるとレモンの輪切りを表面に浮かべた紅茶がテーブルに置かれたところだった。目を開けると途端に五感が戻ってきたようでレモンの酸っぱい匂いが嗅覚を刺激して、少し目が潤んだような気がした。
「お待たせしました。今度はレモンティーにしてみました」
笑顔で告げるテリアは早々に紅茶の中からレモンを取るとアンティーク調のシュガーポッドから山盛りにした砂糖をせっせこと5杯ほど紅茶に入れていた。紅茶に対して砂糖の融解点を超えているのではないかと思うほどに入れているそれに、咲也子はテリアの血糖が本気で気になる。
「1日体験って、何時くらいま、で?」
「そうですね・・・たしか、今の時期ですと16時くらいまでですね。スクールの方が時計は持っているでしょうし、夜になってしまえば魔物が活発になってしまって野外授業ができないので、それくらいの時間だと思っていただければ」
「ありが、とー」
こうしたちょっとした質問に詳しく答えてくれるテリアが好きだ。できるなら【白紙の魔導書】に知識を刻んでほしいくらいには。
浮かべられたレモンとの化学反応で色の薄まってしまった紅茶からレモンを取り出して、ちびちびと飲みだす。
咲也子は基本的には砂糖もミルクも入れないノーマル派だ。若干レモンの酸味に染まったそれを他愛もない会話をしながら飲み干すころ。
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