とんでもない街、国、そして人々

雨皿

1。半能ロロの街案内

アヴェニューの少年


 レンガの町日谷。

 ニッコクと読みます。

 ルビは邪道ですからね、絶対付けませんよ。(ニッコリ)

 僕は町の案内人。

 ロロさ。

 一回20円で案内してるよ。

 ポケットでコロコロ転がってる生き物たちを奴隷にしてこき使ったりする野蛮なゲームの最初の町に出てくるオジさんは傷薬とか虫かごみたいな奴をくれた覚えがあるんだけどさぁ、君は何もくれないんだねって言われても、僕は時給20円なんですよ? 分かりますかー。あんたを一時間案内しても20円しか儲からないの。なんかちっちゃなお菓子買ったら仕舞いな料金でお薬とか、贅沢いうんじゃないよ。

 ニッコクにはチップの文化が根付かなかったから、こちとらジリ貧でその日その日を砂糖水で生活して飢えをしのいでいるってのにさ…え? 

 なんでチップの文化が根付かなかったって? お客さん。こういう時は大抵あれですよ。


 「あれ……そうそう昼間なのに、なんで君みたいな少年がこんな賃金で働かされてるんだ。かわいそうじゃないか」


 でしょう? そこから実は…で悲しい家庭環境についての長い僕の科白があって、それに感動したお客さんがチップを僕に沢山払ってくれるっていう

 

 ……ね?

 

 こういうと大抵のお客さんは結構いい感じに払ってくるのさ。ああ、いやいやいや、毎度有り。そうそうそう、それでいいんです。金持ちの旅人様はそれでいいんですよ。まぁ、実際家が苦しいのはこの街のせいなんだよな、ほんと。変な奴らが集まるから変な文化しか育たない。ってことは皆おかしなことばっかしてるからお金に無頓着だしそこまで興味ない。自分のことにしか興味ない。街や、街に暮らしている他の連中なんてどうでもいい。 


 街に暮らしている自分だけがこの世におればいい


 そういう連中しかここにいないし、そういう仕組みで出来た街にもうなっちゃったし、だからそういう連中しかここにこない。もう後戻りなんか、できないんだ。だから、ここは生まれ故郷の俺は正気の自分を保つために外界の人間に一番接することのできるこの職業を選んだのさ。

 あ、今俺の事馬鹿にしたな! っていうそこのあんた知ってるか? 俺ってこう見えても、脳が半分ねぇんだぜ。笑えるだろ、でも事実は事実。生まれたときに半分持ってかれてたのさ。最初から俺の半分は綿っぽいもので出来た詰め物だったっていうね! ホント洒落にならない話だよ!!



                           

 

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