精霊生活のすゝめ (仮)

狐んこ

第1話 TUTORIAL_1

system boot.....

 


 ……どこか遠くに来た気がする。


 まどろんだ意識の中、目を開くとそこは水の中だった。

 月明かりによって、真っ白なプールの底のような何もない水底が照らされている。

 それはそれはとても神秘的な光景が目に写りこんできた。

 これは夢の中なのだろう、水の中にという事実に対してそれが当然のように慌てる事はなかった。


 しばらくぼーっとそのまま水底をみる。

 水面から月のひかりだろうか、淡い光が湖底をてらしており、まわりに生き物はおろか石すらみあたらない事が余計に現実感を喪失させる。



 昔、地面が教会のステンドグラスになっているとても綺麗な夢を見た事があった。

 この夢の中で夢を思い出し、そのまま悩まずに湖底を歩きつぶやく・・・・・・。


「水の中なのに歩ける、これが本当の水中散歩」


 言葉を口に出した所で、自分、いや俺は気づく。

 実際に声をだせない考えだけで会話がなりたつような夢なんかととは違う。

 これは違和感だ。

 意識はカチリとはまり、思考が、意思を伴った意識として冷たく鮮明になる。


 俺は自分の声を認識した時に、これは夢ではないと気がついてしまった。


「これは、いったい?」


 自らの声はまるで少女のような声音であった、夢の中では自信を見るということはしない。しかし異常事態を感じた俺は視線を自分の体へとむける、そして視線は半透明な双丘をとらえた。


 ・・・ん?。

 まるで幽霊の女の子の体であるようなことに気づく。……リアルな夢?明晰夢?いいや違う。

 夢だと想像力と情報量の容量キャパを超えるとことはできない、俺は夢の中で新聞の文字が読めなかったように想像の限界はたぶんある。

 俺は水の中という事を思い出し慌てて水面へと泳ぎ浮かび上がった。

 そして視界いっぱいに鬱蒼とした森と高い木々の隙間から差し込む月光が目に映りこんできた。



<ここは深緑の森、私は水の......>



 さっき呟いた自分とまったく同じ声が頭の中で響く。頭蓋に冷たい水が流れ込んでくる感覚と共に知識が、自分の意識が自分のものではなくなっていく。

 そして今までの自分という存在や記憶、考え方がまるで夢から覚めたように・・・・・・・・・・・・急速に消えていく感覚



「俺の名前は、上水流 景かみずる けい、明日は会社で定例会議がある......はずだ!」



 夢日記の手法、夢から覚めたらすぐにその内容を口に出し思い出しそして記す。

 夢であったような自分が消える、そんな恐怖にあわててやったその試みは、完全とはいかないが一定の効果があったようだ。ついさっきまでの自分の記憶が泡沫うたかたの夢のようにならずに済んだという、なにかほっとするような気分になった。


 記憶を確認すると自分の名前や学んだ歴史、最近読んでいた本の内容、自分の部屋等この2、3年間の事を鮮明に思い出す事ができる。いや、以前よりも記憶力がはるかによくなっていると確信がある。この不思議な体験の中であるためだろうか。



「……幽体離脱って性別ちがうし、夢ですらないよな」



 途方にくれ呟きに返答するものはなく、俺は自然に水面に腰掛ける。水面って座れるんだな、初めて知ったよ、もちろん足は湖の中だ。


 周り見渡す渡すと、湖は人工物である事がわかる。湖の淵まで真っ白な金属みたいに半球のプールみたいになっており周りには鬱蒼とした森が広がっていた。


 まず深呼吸だ、息を深く吸い、そして吐き出す。さっさとこの現状を受け入れて行動せねばなるまい。

...色々と諦めないといけない点もあるだろうが。


 濃い森のにおいみたいなものを嗅ぎながら、今後を考える。」

 ポジティブシンキングっというわけではないが、それにこのままでは無為に時間をすごしてしまうだけだ、食料の問題もある。

というかこの体は何を食べるのだろうか、水の中限定かもしれないが、水中では息も吸う必要も感じられなかった。半分すけているしな。


 まずは、現状として自分の事を知る必要がありそうだ。

 自分を見つめる、乳は小振りであるがなかなかいい形だ。身長や声からして17~19才というところであろうか。

 まわりの草や木などが俺と同じ常識の大きさであるならば女性体にしてはなかなかの身長であると思う、うんモデル体系だな!

 顔は、半透明なこともあり水面では確認しづらいが悪くはないはずだ。

 自分の右手で左手をさわるが、いたって人の手の感覚と変わらない。

 少し力をこめると右手で左手の内部にちゃぽんともぐりこんでしまった。

 体はどうやら液体に近い形で構成されているようだ、うまく動かすことができれば結構なんにでもなれるきがする。

 ……出来れば体を変化させ性別を戻すことができないか考えたい。

 それにさっき頭に響いたおれの声も気になるもある。

 自分の声がまるで自身に聞かせるように聞こえてきたのもなぞだ。もちろんまわりには木々以外ほかの姿は見えない。幻聴っと片づけるわけにはいかないだろう。

 此処は森であるっというだけでが何処の森かなんて分かるわけもない、私は...の後に続くのは何だったんだろうか?

 きっとこうあれだ、湖にいるのだから、湖の精霊とか、幽霊?妖精?どちらにせよ湖ネタとしてエクスカリ○ーやら金と銀の斧でも準備しておけばいいのだろうか?

とりあえず、自身の乳でも揉んでみながら、確認できることを確認してみよう。


 あれから1時間ほどたった。

 水滴を2,3粒操作できる事に気づいて、おもったより水遊びがたのしくて時間がたってしまったようだ。

 右手を下から上に上げ、水柱を立たせると手のひらより小さいぐらいのいくばくかの水をそのまま空中に固定することが出来たのだ。

 念力~ってかんじですこしづつだが動かすことも出来た。

 水の中にもぐっても呼吸は必要なく、高速でそれこそ以前のように地上を走るより早く移動できる。

 又、水上歩行はできたが、モーゼみたいに湖を割ることはできずモーゼごっこはできなかった。うーん、こつでもあるのだろうか。

 水滴を動かすのが精一杯である。水滴ではなく水全体など将来的には出来るのだろうか、もしやれるならやれるようになりたい。


 他に確認したこととして、空中浮揚もとい、空は飛ぶことはできなかった。

 体が水みたいな形で構成されているので、おもったより形をくずしたりスライムAがあらわれったっという擬態?をする事ができた。

 体の水は、分かりにくいがこの湖と自分の体は思ったより黒い。透明な水に墨汁をすこしたらしかき混ぜたような感じだ、濁ってるって感じではないんだけどなー。

 ただ残念ながら基本的な体は作り変えることはできず、声音も少女のままではあったが。

 それにしても自分の体?なのにすごい違和感がある、というか声はどこからでてるんだろうか?水でできたからだとかクラゲからの進化でもたどった生命体だろうか?

 すこぶる、好奇心は刺激されるが以前の自分とはとあまり考えれなくなったのは記憶が夢のように幾ばくかしか残らなかったからかもも知れない。

 現状を考えると、以前の常識にとらわれると危うい気もするのでこのままでいいかもしれない。


「よし水遊びもこれぐらいしにして、湖の外を探索してみますか。」


 声に出し、今後の自分の行動の指針を決める、木々のせいで分かり難いがいまはたぶん朝だろう。木々の上の方がうっすらと明るい。なんつー深い森ででかい木々だよ。

 水上の足を湖の外へだそう、さぁてこれは一人の人間?にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大ないっ_


 -光が視界いっぱいに溢れる。一瞬の事だった。


 俺の上下に青い魔方陣が現れ、魔方陣どうしに文字が高速で流れている。上へ下へ。光の文字が体を包みこみそして俺は「召喚」されてしまった。



 たぶんなんとなく何だけど、これから色々あるんだろうな。

 そんな諦めににた感情とともに受け入れる覚悟だけは決めておこうと思った。



 光の文字に包まれた後、目の前には薄絹を着たブロンドの少女と顔まで覆った黒服の神官が2人いた。

 少女の年齢は10歳程度だろう。両手を組んで驚いた目でこちらを見ていた。若干であるが神官達にも同様がみられる。他人があわてていると自分が冷静になるって話しをいまさらながらに実感する。


「!?!!@!?▲◇●」


 何をいってるのだろうか?まったく理解できない。あわてているような感じは見られるが。

 ふと足元をみると先ほどと同じ青く輝いてる砂絵、幾何学的な模様の魔方陣が敷かれていた。少女は魔方陣の上の丸い場サークルからこちらに手を伸ばしている。

 とりあえず握手なんだろうなっとはわかるので砂絵を踏まないよう手を握ろうとこちらも手を伸ばそうとするが、体が異様に重く、だるくうごかない。

 目測を誤り、俺はそのばで転んでしまう。

 転んだ拍子に気づいたが俺の体が縮んでいたのだ。

 年齢が5、6才程度に退行している!


 自分の体をみると先ほどと同じすっぽんぽんではあるが、急な出来事の連続でさすがに混乱を抑えきらず自分の体を隠すようにうずくまってしまうはしょうがないと思う。

 俺は重い体を動かしうずくまり、自分の足をみるとさらに悪い事が続いてるに気づく。

 体が足元からどんどん薄くなり崩れていく自分が見える。


「▲◇●!!、@∂▲◇●!!」


 あせるおんなのこのこえがこえる、ひっしのぎょうそうだ。


 ああ、なんかねむいな。


 いっきにいろいろあったけど、なんかすごくねむい。


 彼女は魔方陣の青い光に触れつつこちらに手を伸ばしてくる、光に触れたその手に裂傷が走る、…いたそうだ。


 傷とともに、服も削れて消えていく彼女を、慌てて神官が彼女を止めようと近づいていくのが見える。


 僕は、崩れていく。

 体をまえに、のばす。

 

 彼女の手をにぎり、そして、僕は、


 右手は肘から砕けちり、彼女の手に腕を残し、僕は崩れて消えてしまった。

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