極楽浄土に行ってみた

@gokuraku

第1話 とりあえず裸で踊る


大きな草原があったんだ。

とっても大きな草原。

だから私は裸で踊りました。

だって、気持ちいいんだ。

何が気持ちいいんだ?


ここには誰もいない。

ただ広大な草原だけがある。

くるくると円を描くように、ゆらゆらと。

そよ風が吹いていて、気持ちいい。

そうやって裸で踊っていると、なんだか私の体は金色に輝き出しました。

自分で自分が眩しいぞ。

それで、どんどんと眩しくなって、金粉が、いやなんだろう、要するに金色に輝く光の粒みたなものが周囲にまき散らされていく。

すると、草も輝き出したのです。金色に。

黄金の草原だ。 黄金の草原だ!

黄金の草原が渦を巻き、踊り出す。


するとやがて、その中心から、にょきっと木が生えてきたのです。

それは、はじめは小さな木でした。

でも、にょきっと、にょきにょきっと、どんと生えて、どんどん生えて、伸びて、伸びーて、高く生長していきます。


私はそれを見上げて思いましたよ。

よし、登ってみようじゃないか。


私は木の幹に思いっきり抱きつきました。

なんて逞しい幹なんだ!素晴らしい。

実に素晴らしい幹だぞ。


私が必死にその幹をよじ上っていきますと、この木全体も金色に輝き出しまして、びよーんと、また一気に雲の上まで伸びていくじゃありませんか。


どこまで伸びるんじゃあ!

これには私、もうびっくり。

笑っちゃいましたよ。

いや、愉快愉快。


しかし、せっかく裸で幹に登り始めたのに、途中でやめるなんてできません。

背中がカッと熱くなります。

脚が、腕が、燃えろと叫ぶのです。

金色の魂が高熱を発しているのです。

私はどんどんと登りますよ。

とにかく登るのです。


枝には美味しそうな実がなっていました。

うん、美味そうです。

とっても艶があって美味そうです。

お腹が空いたからね、それを食べてみましたよ。

胃液がじゅじゅっと出てきてる。思うがままにかぶりつく。

すごく爽やかな甘さで、ジューシーで、喉が潤います。たまらんです。

それに、すぐに腹が満たされて幸せな気持ちになりました。


はぁ、と幸せな溜息が口から漏れます。


それから、おもむろに大きな葉っぱの上で、目を閉じて眠りました。

この木の葉っぱは、分厚くて大きいから、裸で寝っ転がったって落ちやしません。

空からやわらかい光が降り注いで、実にすこやかに眠れます。

風が気持ちいいしね。そよ風が肌を撫でていくのです。

布団はないけど、布団なんかなくても平気だいっ。


それから目が覚めるとね、上の葉っぱのそのまた向こうに、昨日と同じ白い雲が見える。

それから下を覗くとね、黄金の草原がどこまでも広がっています。

すごい眺めだよ。

私はいま、こんな凄いところにいるんだ!

それだけで胸が高鳴るよ。

こんな景色を独り占めいているなんて贅沢すぎるね。

この光景を胸に灼きつけておこう。


ああ、それでも。

それでも私はもっと上へ登りたい!

もっともっと上へ。


だって、そう、いつしか、ただひたすらに、上へ上へと登ることが、私の生き甲斐となっていたのです。

いつ辿り着くのかもわからない、あの雲の上に向かって、私はたとえ少しずつでも、近づいていってる。

この一歩が、そしてその次の一歩も、未来の私の礎となっているのですよ。

そう思っただけでちょっと興奮します。


ああ、でも、この木はなぜここに生えてきたのでしょう。

なぜ、この木はあの雲の向こうまで伸びているのでしょう。

想像しただけで、わくわくです。

わくわくですよ。

その向こうに何が待っているのか、それは行ってみなければ、わかりませんね。

だから行くのですよ。


未知の世界へ。


次回、雷神現る。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る