エピローグ

 向かってくる警官達を払いのけ、何とかふたりは警察署の外へ出る事ができた。

「……これで安心か?」

 正義はぼそりと言った。

「何言ってんだ? お前の場合はここからが大変なんだろ?」

 前を走る英雄が即座に否定する。

「……そうだよな……」

 鈴木の場合はドクターが上手くかけあってくれるとしても、俺の場合はそうはいかない。実際に張り紙までされてるんだし、現行犯逮捕みたいな扱い受けちまったし……こっからだ、大変なのは。こっから逃亡生活が始まるのか……。

「……それにしても、お前よくシャンメリー飲む暇あったな」

 逃げながら正義は英雄に問いかけた。

「警察署に向かってる途中で無理矢理一本飲んでおいた」

「なるほどな……」

 すると、突然英雄が立ち止まった。正義は反応が遅れつい彼の背中にぶつかってしまった。

「いてっ! ……急に何だよ」

「……あれを見ろ」

 そう言って彼が指差したのは、ビルの壁に取り付けられている大型ディスプレイだった。ふたりはいつの間にか渋谷駅前のスクランブル交差点に来ていた。

「……な……! あれは……!」

 正義の目に飛び込んだのは、黒い三角帽子をかぶり、黒いコートに包まれた長髪の人物だった。不敵な笑みを浮かべている。

「日本国民の諸君、初めまして」

 画面の中の男が話し始めた。気付けばその場にいる全ての人がディスプレイを見つめていた。

「私は暗黒闘士ジャーク。暗黒軍団ダークの頭領だ」

「!」

 あいつが……ジャーク……!

「細かい説明は追々するとして、簡潔にまとめる。この国は私のものとさせてもらう」

「何っ!?」

 ジャークの言葉が終わると同時に無数のテシータがそこら中から現れた。

「……っ! テシータ……!? こんなにたくさん……!」

「逃げるぞ、田中」

 英雄はぐいと正義の腕を引っ張る。

「でもっ! こいつらをほっとけってのか!?」

「多勢に無勢だ。今は逃げるぞ! 今ここで俺達が捕まってどうする!」

「くっ……!」

 そして、暗黒の時代が訪れる。


 第3章 剥されし仮面 缶

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る