第8話 クリスマス・システムの力
クリスマスクの攻撃に、正義はただ耐える事しかできなかった。反撃をしたいが相手の動きが速すぎる。こちらが攻撃をしようとするとすぐに次の一撃が来る。それに、学校から正義を追いかけてきた時よりも明らかにそのスピードが増している。正義はその不思議の秘密に気付き始めていた。
「こんなもんかよ! はははははははは!」
攻撃を続けながら鈴木は余裕の笑い声を発していた。ちくしょう、このままじゃ何もできねー!
しかし、次の瞬間あり得ない事が起こった。それはクリスマスク鈴木英雄が正真正銘のバカだからこそ起こり得る現象だった。
「ははははははははははははははははぶっ!」
奇妙な事に、彼は突然攻撃を誤りあろう事か自分の顔を殴ってしまった。一体どうやったらそんなミスが起こるのか。
ここだ! 正義はこの機を逃さなかった。
「ハロウィン・パンチ!」
ハロウィン仮面の攻撃力が上がった! 正義のパンチは鈴木の左頬に直撃した。
「ぐっ!」
彼はその勢いで飛ばされた。正義はすかさず次の攻撃を繰り出すためにそれを追う。あいつに自由に動ける時間を与えてはいけない!
「まだまだあ!」
だが、その時思わぬ邪魔が入ってきた。
「また会ったな! サーロイン仮面!」
「へっ?」
彼は思わず動きを止めた。邪身だ。先日逃がしてしまったコウモリ邪身アイがそこにいた。
「うわっ! こんな時に邪身かよ!」
「何よそ見してんだよ! 田中!」
この間に鈴木は立ち上がっていた。
「! やべっ!」
鈴木の攻撃が来る……! 正義はすばやく防御の構えをとった。
しかし、鈴木はすぐに攻撃をしてはこなかった。アイを見つめていた。
「あいつはこの前の……! ……あの時あいつを捕まえてさえいれば、俺は独房に入れられずに済んだんだ……!」
「いや、それはほぼ100
「……」
鈴木はしばらく黙っていた。何か考え事をしているように正義には見えた。
「……よし、まずはあいつを倒す」
「え?」
正義はつい聞き返した。
「お前はその後だ、田中。先にあいつにこの前の復讐を果たす」
「……」
て事は、一時休戦か……とりあえず一安心。ていうかこいつ殺すとか復讐とか言ってる事英雄と真反対じゃねーか。
「おいお前!」
鈴木はアイに向かって呼びかける。
「む! お前はこの間助けてくれた奴!」
あれ、助けられた事になってるんだ……と正義は思った。
「我が名はクリスマスク! お前の残り少ない命に、メリー・ワン・タイム!」
「何!? クリスマスクだと!? まさか、貴様も敵だったのか!」
「何でクリスマスクは一回で覚えられんの!? 日本語か! 日本語がダメなのか!」
正義はついつっこんでしまう。
「ああそうだ! 俺は英雄になるべき男……! 貴様らを皆殺しにしてな!」
「だから! 英雄はそんなネガティブな言葉使わねーよ!」
「いくぜ! ……おい田中」
「! 何だよ」
「今からクリスマス・システムの力を見せてやる。お前が攻撃力が上がるように、俺は……」
「スピードが上がるんだろ」
「! 何!? なぜそれを!?」
「さっきセリフ決めるとスピード上がったからな」
「……」
「? おい、どうした?」
「……ふっ、なるほどな」
「?」
「いくぜ邪身! メリー・ゴーランド!」
説明しよう! メリー・ゴーランドとは、高速で相手の周りをぐるぐる回る事によって、相手を撹乱させる技である! クリスマスクのスピードが上がった!
「な……速い!」
アイはそのスピードについていけていなかった。正義にも彼の動きを目で追う事は難しかった。
「す……すげえ……!」
あんな奴を相手にしてたのか、俺は。ていうか、これからまた相手にしないといけないのか……。
「はっは! 目が回るだろ!? 邪し……うっぷ!」
その時、クリスマスクの動きが止まった!
「う……うっぷ……お、おえっ! おええええええっ!」
「うん! ばっちり目が回ってんじゃねーか!」
あんなアホに苦戦してたのか、俺は。ていうか、これからまた相手にしないといけないのか、あのアホを……。
「何だ? まさか自分が目を回したのか? はははは! マヌケが!」
突如耳鳴りが響き始めた。頭を締め付けられるような気持ち悪い感覚が正義を襲った。
「う! うわあ! ……な、何だこれは……!」
「超音波攻撃だ。苦しむがいい。そう簡単に動けまい」
アイだ。奴が出す超音波のせいだ。
「うっ! おえええええええええっ!」
酔いに追い打ちをかけるように超音波攻撃。今の鈴木、相当気持ち悪いに違いない。
って、そんな事考えてる場合じゃない! て事はあいつは俺より動けないって事だ。だったら真っ先に倒されちまうじゃねーか!
「さて、まずはお前から始末してやろう、クリスマスク」
「うっ! おえええええええええっ!」
鈴木は全く動けずにいた。そんな彼にアイはゆっくりと近づいていく。
「やばい! 何とかしないと……!」
しかし、正義もすぐに助けにいけるほど動けるわけではなかった。この超音波をどうにかしなければ……!
……いや、待てよ……?
「……腰にあったこいつを忘れてた……!」
正義は腰に提げていた新武器、ハロウィン・ソード(包丁)を手に取る。
「……あんまり使いたくねーけど……しゃーねー!
彼は力一杯包丁をアイに向けて投げつけた。ハロウィン仮面の攻撃力が上がった!
そして、ぶすりと鈍い音が聞こえた。ハロウィン・ソードは見事アイの腹部に突き刺さっていた。
「うごふぅっ! ぐっ! ぐふぅおふぅっ! ……こ、これごほあっ!」
アイは悶えていた。腹部からの出血に加え、たびたび吐血をしていた。
「なっ! ……ぐふごほおっ!」
「……あ、ああ……!」
正義はその苦しむ姿をただ見つめていた。自分がやった事を思い返していた。俺は鈴木を助けるために包丁を投げた。そしてそれはきれいに邪身に刺さった。おかげで鈴木は助かった。でも何だ、この感じは。まるで、まるで人殺しのようじゃないか。
やがてアイは爆発した。
続く!
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