見守っていて下さいね
少年は小さな山の上から見える海を眺めながら、誰かに語りかけていた。
「皆さんは昔この海の向こうへ行ったんだんですよね」
返事はなかった。
「あれからもう七十年以上……でもこの世からは無くなってませんね、戦争は」
やはり返事はなかった。
「皆さんの思いは永遠に無くならないでほしいですけど、この世の悪しき縁はいつか必ず……」
「……さてと、行こ」
少年はその場を去ろうとしたが、ふと振り返り、
「見守っていて下さいね、皆さん」
そこには誰もいないように見えるが、たしかにいた。
様々な思いを胸に生きた人達が。
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