第19話 戦果
ナイフを仕舞ったところでウィンドウがポップしてきた、いつも通りのドロップアイテムの一覧だ。
盗賊たちは結構アイテムを持っていたようで大量のドロップアイテムがウィンドウに表示されている。
内容はと言えばリボルバー式の拳銃3つにクロスボウ2つから始まって、人血、弾薬に矢、金……etc。
アンデットポーションを飲んで体力を回復しつつそれを流し読みしていると少し気になる物があった。
・計画指示書【キーアイテム】
計画指示書
うん、フレーバーテキストが少しざっくりしすぎな気もするがキーアイテムと言う表記がかなり気になるところだ。
さっそく読んでみようとウィンドウを閉じたところで別のウィンドウがポップしてきた。
・レベルが上がりました
習得スキルを選んでください
ふむ、レベルアップのようだ。
レベル2に上がった時よりもずいぶん時間がかかった気もするが思えばまともに戦闘したのって数えるほどしかない気もする。
種族スキルを一つ選んでください
・影棲
・影霊使役
・絶影
前回とは違って物騒な名前はないが……やはり名前だけではいまいち分からないので詳細を見てみよう。
影棲:
人や物の影に入り込み隠れることができる、影棲中は日光の影響を受けない。
影霊使役:
自身と同じ姿の影を使役することができる、影霊の能力は自身のステータスによる。
絶影:
影を切り離し自身に掛かる重力を無効化することで壁や天井を歩くことができる、鏡などに自身の姿が映らなくなる。
なんというかどれもそこそこ便利そうだけど影霊使役は自身のステータスってことは武器を使えないかも?
んー、壁とか天井を歩けると言うのはパルクールとも相性がよさそうだな……。
と言うことで今回の種族スキルは絶影を取得する。
職業スキル【ステータス上昇率UP1】を獲得しました。
おや?どうやら職業スキルは今回選択肢がなかったようだ。
ステータス上昇率UP1:
攻撃を受けた際のステータス上昇率にボーナスを得る。
※この効果はリベンジスタンスに加算される。
サブ職業スキルを1つ選んでください
・罠作成(小型)
・罠作成(大型)
こっちは2つ、どうやら系統が分かれているようだ。
罠作成(小型):
隠蔽効果の高い小型の罠の作成や細工が可能になる。
罠作成(大型)
集団に対して効果の高い大型の罠の作成が可能になる。
どちらのスキルも気になるがここは好みで罠作成(小型)にしよう。
さてスキル選択も終わったことだしさっきの計画指示書を見てみよう。
計画指示書:
例の暗殺ギルドに入り込んだ者の準備が完了した。
予定通り鍵と資金の受け渡しを行う。
身代わりを用意してはいるが出来る限り暗殺ギルドの物には気付かれぬよう心掛ける事
うん、何の話だかさっぱりだ。
だがこの身代わりってひょっとしてアリスの事か?だとするとこのことはウェルターさんに伝えておいた方がいいかも?
でもウェルターさんとフレンド登録はしてないので連絡の取りようがないな……同じ場所で屋台を開いていれば良いのだが……。
何にしても取り敢えず自警団に戻って報告を済ませてからだ。
僕は視界の端の体力ゲージを確認してほぼ上限まで回復したのを確認してからもと来た道を引き返して下水道を後にした。
「ではこちらが報酬の銀貨5枚になります」
「ありがとうございます」
自警団の訓練所へと戻ってきて報告を終わらせて報酬を受け取る。
受付のNPCに盗賊が軍の者だったことを伝えたところ最近軍の不穏な動きが目立っているらしい、今回の事についてまた話を聞くために呼び出されることもあるかもしれないとのことだった。
夜明けまではもう少し時間があるが特にすることもないのでさっさと洞窟へ戻るとしよう。
洞窟に戻るまでに数回野犬に襲われたが全て武器を抜くまでもなく素手で吹き飛ばした。
洞窟に到着するとグール達は丁度狩りから戻ってきた所だったようで鹿を解体していたのだがその姿はなかなかゾっとするものがあった……下手なホラー映画よりも怖いぞこれ……。
グール達の鹿解体ショーを横目に軽く挨拶を交わして洞窟へ入り自分の部屋へ。
ロータスはまだインしていないようで寝袋の中ですやすやと寝息を立てている。
吸血鬼は睡眠が必要ないので野営用のアイテムは必要ないがパーティーを組むなら持っていた方がいいかもしれない、街に戻ったらその手の店を覗いてみるか。
そして部屋に用意されたベッドロールのアリスもまだ夜明けまでだいぶ時間があるので起きてくる気配はない。
話し相手もいないしやる事もないし暇だ、もう少し街の方で時間を潰していた方が良かったかな?
何か暇つぶしはないかと考えながら洞窟の天井を見上げていてふと思いつく、そういえば新しいスキルはまだどれも確認していない、絶影とか天井を歩けるらしいしここでも試せるかな?
という訳で試してみた。
絶影はパッシブスキルなので自分で発動したりする必要はないが、逆にどうすれば使えるのだろう?こういう感覚的なものってきっかけがないと使いにくいからアクティブスキルであった方がありがたい気もするんだけど。
そんなことを考えながら試しに壁に手をついてみると軽く磁石同士をくっつけたときの様な感覚。
地面から足が離れた瞬間体がふわふわと浮き上がりそのまま壁に手をつけたままバク転の要領で天井に足を付けると蝙蝠のように宙吊りの状態になった。
重力の影響がないようで逆さになった時の頭に血が上るような感覚はない。
なるほど、これは楽しい。
少しの間壁や天井をピョンピョンと移動しながら遊んでいるとふと視線を感じた。
天井から宙吊りの状態で視線を感じた方向を見遣ると
「なにやってるんですか……?」
驚いているような呆れているようなすごく微妙な表情をしたアリスがこっちを見ていた。
「いや、覚えたスキルの練習をだね……」
アリスには言い訳のように聞こえるかもしれないがあながち嘘でもない、天井や壁を飛び回ってある程度絶影の特性も理解できた。
絶影によって重力は無効化されているが体が常に浮くわけではなく一番近い接地面か自分が意識した方向に対してある程度引き寄せられる様だ。
アリスに言い訳をしているとロータスがログインしたようで起き上がって周囲を見渡す、その視界にアリスを捉えるとそのままアリスの視線の先の僕へと目を向ける、どうやら僕を探していたようだ。
「なにやってんの?」
天井に蝙蝠のようにぶら下がる僕を見て微妙な表情で問いかけてくるロータス。
「いや、新しいスキルの練習をですね……」
先ほどアリスとしたやり取りをロータスとしつつ地面に降り、朝の戦果報告で話を逸らす。
二人に夜の間に受けたクエストでレベルアップしたこととクエスト中にあったことを話す。
「どうやらグランドクエスト絡みみたいだね」
そう言いながら僕の取り出した計画指示書を眺めるロータス
「グランドクエストって?」
聞きなれない単語に疑問符を浮かべているとロータスが説明してくれた。
「グランドクエストっていうのは普通に受けるクエストとは違うこのゲーム通してのストーリー要素のクエストの事だよ、グランドクエストが進行するとこのゲーム全体に影響するもので場合によっては街一つが消えたりなんかもするらしいよ」
なるほど、盗賊の振りをしてた軍人は大げさなことを言ってたと思ったのだがそうでもなかったのか
「てことはアリスって実はけっこう重要な立ち位置だったのか?」
「ほえっ!?」
僕がそういうと話に全くついてきていなかったアリスが変な声を出す。
「重要というかアリスはグランドクエストに気付くきっかけみたいなものかな?」
ロータスはそれを無視して話を進める。
「なるほど」
「まぁそれはさておきこれからの行動によっては組織やその傘下のギルドと敵対したりなんてこともあり得るかもしれないね」
「今のうちにどこに所属するかも考えておかないとか……」
「今すぐにってわけではないけどね、先片付けるべき問題はアリスのほうかな?」
「あぁ、早いとこウェルターさんと連絡が取れればいいんだけど」
「じゃあ取り敢えず街に行ってみようか、いなかったらいなかったで情報集めればいいし」
「そうだな」
という訳で街に戻ることになった。
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