第15話 おもらしアリスと洞窟へ

状況をいまいち飲み込めていなかったアリスに説明をした後ロータスと予定について話し合う。

アンモニア臭いアリスをこのまま連れて歩くというのは物理的な意味でも精神的な意味でも衛生上よくないと思われるので次の街で下見ついでに服を買ってから最初の街であるエーアストに戻るという方針になった。

話が終わったところでタイミングよく列車が次の街、プロシャンに着いた。


アリスは顔を隠すために僕が前に使っていた防御能力は皆無なくせに隠蔽効果付きと言う微妙な性能のコートを着てフードをかぶっている。

列車を降りて駅を出るとエーアスト以上の活気に一瞬クラッとする。

「すごい数だな…」

「朝一で買ってプレイしてる人たちは3つ目の街に行ってるくらいだからね、プレイヤーの人数的には今はこの街が一番多いだろうね」

人数が多い……アリスに貸したコートには隠蔽効果があるのでフードをかぶっていればそうそう見つかるということはないだろうが注意はしておくべきだろう。


そんなこんなで人ごみを避けつつ歩くこと20分ほど、服屋を見つけてアリスの新しい服を購入して店で着替えた後適当に1時間ほど街を散策する。

基本的にはロータスの買い食いに付き合ってただけだが……。


「そういえば獣人ってアリス以外はワーウルフのウェルターさんしか見たことなかったんだけど他にどんな種族があるんだ?」

ロータスが屋台で買ったフライドポテトを食べるのを眺めつつふと疑問を口にする。

フライドポテトに夢中なロータスは話を聞いていなかったようでアリスが答えてくれる。

最初こそビクビクしていたアリスだがウェルターさんとの一件の説明をしたところ害意がないことが分かったのか僕を怖がることはなくなった。

というかむしろ友好的すぎる気もするほどだ。


「有名なのはワーウルフ、化猫、妖狐の3種族ですね、比較的数が多いのもこの3種族です、ほかは私の様な月兎、バードマン、マーメイド等が有名ですね」

「なるほど」


散策を終えて駅に向かい時間通りに来た列車に乗り込む。

アリスを狙う者に見つかることはなく無事エーアストに到着、列車で座りっぱなしだったため少し固くなった気がする(仮想の体なので本当に気がするというだけだが)身体を解す様に伸びをする。

同じように上に手を伸ばして伸びをしながらロータスが声をかけてくる。

「んーっ…それでベル君隠れ家に当てがあるって言ってたけどこれからどうするんだい?」

「初日の夜に行った洞窟に僕の部屋があるからそこを使おうと思ってる」

「それってグールの洞窟だよね、大丈夫なの?」

「多分何とかなると思う」


そんなこんなで駅を出た後すぐにそのまま南側の門から街を出て洞窟へと3人で歩く、遮光ジェルの効果はとっくに切れているが日が沈みかけている今ならペナルティもそこまで酷いものではないからフードを被るだけでいいだろう。


歩きながらこの道のりを誰かと歩くのは初めてだなとふと思った。

初日の夜に一人で歩いたときは野犬に襲われたものだがまだ明るいうちは出てこないだろうなんて考えていたのだが……。

「ワン!!ワン!!」

どうやらフラグだったようでどこからともなく野犬が10匹ほど……10匹!?多いわ!!初日なんて夜なのに3匹だったぞ!?


数の多さに少し困惑しつつ腰からナイフを抜くと既にクロスボウを構えていたロータスが野犬の頭を射抜く、それが合図になって、野犬が一斉に飛び掛かってくる。

奇襲ではないから自動迎撃は発動しない、そして今回は自分で発動させる気もない、野犬なら素手の一撃でも倒せることは既に分かっているのだ。

太陽のせいでペナルティがあるものの初日と比べればレベルが上がってステータスが倍加しているからペナルティ分を差し引いても今のステータスの方が高い


正面から飛び掛かってきた犬を腕を払う様にして殴り飛ばして直後に後ろから来た犬に蹴りを放つ、殴り飛ばした犬は内臓が潰れたのか口から血を吹き出しながら吹き飛び、蹴った方は……なんか、頭がなくなっていた…。

あれ……おかしいな、そこまで力を込めた筈じゃないのだが……気持ち的には一旦吹き飛ばして距離を取れればいいかなくらいに思っていたのだがどうやら吸血鬼の基礎ステータスの高さは伊達ではないようだ。

このゲームでは基本的にステータスを自分で決めることはできずステータスの数値は基礎ステータス×レベルで決まる、そのため基礎ステータスが高ければ高いほどレベルアップの恩恵は大きいわけだがバッドステータスのペナルティは元の基礎ステータスにかかるためレベルアップすればするほどペナルティの数値も大きなものになる。

筋力で考えれば基礎ステータスは9だが太陽にさらされているペナルティで-1、僕のレベルは今2なので8×2で筋力は16初日の状況と比べて+7なのだがかなり差を感じられる、この先吸血鬼のステータスの高さを持て余しそうな気がする……。

そんな先の心配はさておき、横から襲ってきた犬をナイフで開きにして正面から飛び掛かってきた犬をけりで吹き飛ばしたところでどうやら全滅したようだ。

僕が倒した犬は4匹ロータスが3匹でアリスが3匹、ロータスは素手での攻撃は行わず避けてクロスボウを撃つだけ、アリスは銃を使わず襲ってきた犬を素手で殴って倒していた。

ロータスの周りには矢が刺さった犬の死体が3匹、アリスの周りには多少首が変な方向に曲がってたりする犬の死体が、僕の周りは犬の惨殺死体……なんでこうなった。


犬からドロップしたアイテムを集めている途中、血の匂いで少し空腹を感じたのでドロップしたての獣の血をおやつ代わりに1つ飲んだ。

僕の周りの惨殺死体や血を飲んでる光景を見てアリスがまた少し僕を恐怖の混じった目で見て居る気がするが気にしないことにして洞窟へ

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