第4話 こんにちはアンデット
洞窟の中に踏み込む、視界はアンデットとしての特性なのか僅かな光だけでもよく見える。
自分の足音だけが響く洞窟の中を歩くこと5分ほど、特にこれといったことはないこの調子なら何もいなさそうだ。
そう思って横穴に入ったとき目の前に人影が現れた。
「ヴェッ!?」
驚きのあまり変な声が出た、が何とか反応して後ろに飛び退いて距離を取ることはできた。
ナイフを抜いて構えたところで相手に敵意がないことに気が付く、目の前に立っている者を慌てて確認すると見た目は確かにグールのようなのだが先ほど遭遇した野犬と違ってターゲットカーソルが表示されていない。
「どういうことなんだ…?」
呟いたところで目の前のグールが口を開ける。
『あのー…』
なんだこれ…耳に聞こえるグールの声はウガウガ言ってるだけなのに言葉の意味が理解できる。
『争う気はないのでできれば武器を下してもらえないですかね…』
なんかやたら低姿勢なグールだな…。
とりあえず大丈夫そうなのでナイフをしまう。
『どうしてここへ?』
「近くの街でこの辺でグールの目撃情報があって街の人が不安がっているらしくて、それで依頼を受けて見に来たんです」
『なるほど』
「あなたは最近ここに来たんですか?」
『えぇ、というかこの洞窟のグールは全員私と一緒に来ましたから』
「ほかにもグールが?」
『はい、15人ほど』
「どうしてこの洞窟へ?」
『前まではもっと南の洞窟に住んでいたんですが、人間に襲われて…何とか生き残った者でここに逃げてきたんです』
「じゃあこの辺の人間に危害を加えたりって事は…」
『ないです!!ないです!!私たちはただ静かに暮らしたいだけで…ただ怪我を負っている者が居るので薬草を摘みに外に出かける事があるので、襲うなんてことは絶対にないですけど私たちはこの見た目ですから夜中に遭うと驚かせてしまうかもしれませんね…』
それなら問題なしって報告して大丈夫そうだな…
「ちなみに薬草を摘みにってどの辺まで行くんですか?」
『この辺には生えてないのでもう少し街の近くになりますね…薬草にしても十分ではないですし薬があれば街の近くに行くこともないのですが…』
「薬ですか…」
言いながらふと自分のアイテムポーチに初めから入っている物の存在を思い出して取り出す。
「これって役に立ちますか?」
『これは…アンデットポーションじゃないですか!!普通の街じゃアンデット用にポーションを調合してくれる薬師なんてほとんど居ないのにどうやって…いや、そんなことよりこれいくつか譲っていただけませんか』
初期から持っているものだし10個もあるのだ、いくつか分けても問題はないだろう。
「ええ、構いませんよ、いくつ必要ですか?」
『5つあれば怪我人全員を癒せます』
アイテムポーチからポーションを5つ取り出してグールに渡す。
「どうぞ、では僕は街に戻ります」
『待ってください、何かお礼がしたい何ができるかはわかりませんがボスに会っていってください』
ボスがいるのか…ちょっと気になるな…。
そんなこんなで、グールに連れられて洞窟のさらに奥へ、支道をすべてスルーして一番奥の天幕の掛かった場所通される。
『ボス、客人を連れてきました。』
とグールが声をかけると布越しに何かが動く気配がする。
そして目の前に現れたのは見た目はグールなのだが…頭上のカーソルの横の名前はグール・ロードその横にご丁寧に自分よりレベルが上であることを示す髑髏マーク。
『何者だ』
グール・ロードの問いにグールが事情を話す。
グールの説明を聞き終えたグール・ロードはうなずいた後口を開く
『つまり君は同胞の恩人というわけだ、ならば相応の扱いをしなければならんな…と言っても今の我等にできることなどあまりないのだが、君を仲間として迎えよう、何かあればいつでも力になろう、それとこの洞窟は自由に使ってもらって構わない、君の寝床も用意させよう』
「ありがとうございます」
『礼を言うのはこちらの方だ』
そういうとグール・ロードはグールの方に向き直り命令する
『客人を案内して、空いている場所に寝床を用意しろ』
めでたく(?)仲間として認められグール・ロードと別れた後グールに連れられて洞窟を案内される。
と言ってもただ住居として使っているだけなので目立ったものはないのだが、作業場の道具は自由に使って良いということなので何か作ることがあれば利用できるかもしれない。
数人のグールとたまにすれ違いつつ洞窟を一通り案内されて最後に残った支道に入ると思ったのだが支道の前でグールが立ち止まる。
「入らないんですか?」
『いえ、この支道はトラップが仕掛けられているので使ってないんです仲間にはトラップを解除できるものも居ないので入らないようにしているんです」
もしかしたら罠師のスキルが役に立つかも?
「なるほど…ちょっと見てみてもいいですか?」
『罠の解除ができるんですか?』
「一応罠師なので、どうにかできるかもしれません」
そう言って支道の奥をのぞいてみるのだが
「うわっ…」
『どうかしましたか?』
「いえ、ちょっと数が多かったので…」
さっき取ったスキルのおかげかは分からないが大量の罠があることが分かる。
普段なら絶対に見逃しそうな者もそこにあることが一瞬でわかるのだ。
『ここに入ろうとして1人負傷してから誰も立ち入らなかったんですけど、入らなくて正解でしたね…』
「えぇ、下手に奥まで進んでたら死人が出ていたかもしれませんね」
取り敢えず作動させないように気を付けながら一番手前のトラップに近寄る、どうやって解除するんだろうかと思ったのだがこれもスキルを取った影響なのか解除の仕方が何となくわかる。
1つ目のトラップは床の近くの糸が引っ張られると天井から槍が数本降ってくるという物だったので天井付近の仕掛けのピンから糸を切り離して解除した後仕掛けの槍を回収した。
回収した槍は7本もあったのだが大量にあっても使い道はないので1本だけ貰って後はグールの方で使ってくれと言ったら結構喜んでいた。
2つ目の仕掛けは同じように床付近の糸が引っ張られて作動するタイプのもので壁からバネ仕掛けでナイフが飛んでくるといったものだった。
これも糸を切ったらそれでおしまいだったので仕掛けからナイフを外して貰っておく、自分のナイフと違って小さくて薄いナイフなので投げるのにちょうどよさそうだ。
バネの仕掛けも何かに使えそうな気がしたので取り敢えずポーチの中に突っ込んでおく。
そうして感圧板式の罠やトリップワイヤーやらを解除しながら行き止まりに到達するころには20個以上の罠を解除してその中から大量のナイフやら槍やら剣やら爆薬と使えそうな罠用の装置を回収した。
その中で僕が貰ったのは投げナイフ30本と槍1本とレイピア2本と爆薬4袋に使えそうな罠用の装置がいくつか、残った物は持っていても使わないと思ったのでグール達の資材になった。
そして道中の罠だけでお腹いっぱいだったのだが、行き止まりには見るからに怪しい箱がドンとおかれていた。
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