第2話 復讐者、訓練する
街を1時間ほど彷徨ってやっと訓練場と書かれた看板を見つけた。
自警団の訓練場だが市民にも護身術を教えてくれるらしい、早速中に入って受付のNPCに声をかける。
「ここで訓練をしてもらえるって聞いたんですけど」
「はい、何の訓練ですか?」
「ナイフの訓練って出来ますか?」
「確認しますので少々お待ちください」
そう言い残してパタパタと受付の奥の部屋へはいっていく受付のお姉さん。
2,3分ほどしてお姉さんが戻ってくる。
「お待たせしました、大変申し訳ないのですがナイフの訓練が可能な正規の自警団員は今全員出払っておりまして…」
「そうですか」
「ただ準団員の方が訓練をしてもいいと」
「あの、正規の団員と準団員って何が違うんですか?」
「自警団の団員は緊急時には予備兵として扱われるため軍である程度訓練を受けています、準団員は市民から志願を募っていますので特に何かの訓練を受けたわけではありません、ですが今回訓練をしてくれるという人は実績もありますし腕には問題はないと思います、教官の経験があるわけではないのでそれが保証になるという訳ではありませんが」
「なるほど」
と言われてもどうせ今日は他に予定があるわけでもないし、何か得られるものがあれば良いのだ、やってくれるというのならありがたく訓練を受けよう。
「じゃあお願いします」
「分かりました、それでは訓練費として銀貨5枚を頂きます」
アイテムストレージになっている腰のベルトについているポーチから小銭袋を取り出して中身の半分を取り出して受付の机に置く。
「銀貨5枚確かに受け取りました、ではあちらの扉の前でお待ちください」
言われた通りに扉の前で待つこと数分
「お待たせしました」
目の前に現れたのは動きやすそうな服に着替えた受付のお姉さん…
「あの、訓練をしてくれるのって」
「私です」
どこか恥ずかしそうに言うお姉さん、大丈夫なのかな…?
「じゃあ訓練を始める前に自己紹介をしておきましょうか、私はソフィアです今日はよろしくお願いしますね」
「ベルです、よろしくお願いします」
こうして受付のお姉さん改めソフィアさん指導を受けることになった。
基本的な構え方やナイフの振り方を教えてもらった後木製のナイフを使って実戦形式で訓練と言う流れになったのだが、さっき大丈夫なのかとか思ってすいませんでした。
ソフィアさんめちゃくちゃ強いです。
いや、もしかしたら僕が弱いだけなのかもしれないけれど…。
「ナイフに集中し過ぎ、相手全体を見て」
「はい!」
ソフィアさんのナイフは何度も僕の急所に当たるのだが、僕はソフィアさんの体に中てることすら出来ていない、これが木製じゃなかったら何十回も死んでいるだろう。
「大振りはダメ!ここぞというとき程大きな隙になるわ」
そう言いながら空振った僕の腕をすり抜けて首元に木製のナイフを当てるソフィアさん
「これで53回?54?」
「もう覚えてないです」
「あははっ、ちょっと休憩しようか」
ソフィアさんは部屋の隅に置いてあるピッチャーからコップに水を注いで手渡してくれる。
「ありがとうございます」
「そういえば、ベルさんはどうしてナイフを?」
自分の分の水を注ぎながらソフィアさんは聞いてくる
「ほら、最近治安が悪いので護身術を身に着けるのはもちろん分かるのですけど、最近は銃が一般にも出回り始めたでしょう?一昔前までのマッチロック式とかフリントロック式は少し大がかりで軍以外に持ってる人ってあまりいませんでしたけど、最近パーカッションロック式の銃が出回り始めて扱いもそこまで難しくないので護身用に持っている人も珍しくなくなってきて、自警団でもナイフでまともに戦える人なんて数えるくらいしかいませんよ?身を守るにしても銃ならもっと楽に身を守れるのにどうしてナイフを選んだのかなって」
キャラが最初から持ってたからなんてメタ発言してもただの変な人だよな…。
「んー、銃なんて持ってても中てれる自信もないですからねぇ全部外して弾を込めてる間に相手に打ち殺される気がします」
とりあえず思いついたことを適当に言ってみた。
「私もそうなんですよ!!試しに撃ってみたら全くダメで…えへへ」
恥ずかしそうに笑いながら言うソフィアさん、結構可愛い。
「まぁ、銃の話はさておき再開しましょうか」
「あ、はい、よろしく願いします」
結局ソフィアさんの体にナイフを当てることは出来ずに訓練は終わった。
「ベル君体力あるのね、一度も息が上がってなかったし、って吸血鬼なら当たり前かな?」
「気付いてたんですか?」
「そりゃその牙みれば誰だって気付くわよ」
なるほどそう言う事か
「街の中で牙無しじゃない吸血鬼も珍しいしこの辺には最近来たの?」
「えぇ、今日来たばかりですけど…牙無しって何ですか?」
「ベル牙無しを知らないの?」
驚いた顔をするソフィアさん、適当に話を合わせておく。
「えぇ、あまり外に出ることがなかったので」
「牙無しって言うのは言葉のまま自分で牙を折って血を吸えないようにしてる人たち、対外的に自分たちは人を襲いませんよって示すことにもなるわね、自警団にも吸血鬼が何人かいるけどみんな牙無しよ」
「なるほど」
「まぁそれでも輸血用の血液とか飲んでるから牙があっても無くても変わらないけどね、牙が有っても人をそう人は少ないし」
「ベル君も血がほしかったら薬屋さんで調合用の血が売ってるから見に行ってみるといいわ」
「まぁ機会があれば行ってみます」
「それでベル君はこれからどうするの?」
「友達と会う約束があるのでそれから決めます」
「友達ってベル君と一緒にこの町に来たの?ってことはその人も吸血鬼?」
「まぁそんなところですが友達は人間ですよ」
「そう…ひょっとしてデートとか?」
ソフィアさんはからかうように言う。
「いや、あいつはそんなんじゃないですよ!!」
「まぁ、そういうことにしておいてあげるわ、約束してるなら早く行ってあげないとね」
「はい、近いうちにまた来ますね」
どこか含みのあるソフィアさんの言い方をスルーして訓練所を辞去する。
訓練が終わった旨を蓮華にメッセージで送っておいて待ち合わせの噴水広場に向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます