魔女喰い(流れ行く時の中で)

僕たちの日常は、とても狭い範囲で繋がっているのかもしれない。

トゥルルルルル・・・

古い電話のベルが鳴り響く。この電話で音が鳴るのは久しぶりだ。

俺はスマホに手を伸ばした。

「久しぶり。魔女に喰われたのかと思って心配したよ」

「はじめまして」

・・・・誰だ?なんでこの電話を知っているの?

「どちら様ですか?その電話番号は・・・」

「そうね。別に電話を盗んだわけじゃないし、彼女も元気よ。ちょっとこっちの事情があってね」

そうなのか・・・まあ、家族の事情とか知らないしな。でも、どうして本人からじゃないんだろう?

「ご家族の方ですか?俺が何かご迷惑をお掛けしたのでしょうか?あの、本人とお話する事はもう出来ないのでしょうか?」

「そうね。もう関わらない方がいいと思うの。あなたのためだから」

とても冷たいあしらわれようなのに、彼女の言葉はとても暖かく聞こえた。やっぱり、家族の方なんだろうな。同じ雰囲気がする。

「それから、魔女喰い事件に興味があるようだけど、もう調べたりしないで、いくつかの資料が届いているでしょ。彼女が送ったやつだから、それはそっちで処分して頂戴」

えっ?彼女が送ったやつ?あの機密書類とか・・・

電話していたあの彼女って警察関係者だったのかな?それともスパイ活動して捕まっちゃったりしたのかな?

「ほ、本当に彼女は元気なんですか?もう一度、お話することは出来ないのでしょうか?声を聞かせてください」

まるで、誘拐事件でもあったかのような、犯人とのやり取りに似ている。

「わかった。変わってあげる」

どうやら要求は叶ったようだ。

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