Scene1  私は猫なの  sight of マー


まえがきに代えた

読み難いという人向き Scene1のあらすじと注意事項


絵本風です。


猫は見ていた。 

《芳桜院 境夜》という男の私生活と

彼が消えた直後の空間に開いた黒い穴を



注意事項


●猫の視点や言語理解は人間とは異なります。

●猫は飼い主の影響を受ける愛玩動物です。

●猫を擬人化したネコの一人称であって、猫の思考回路そのものではありません。

 

●ネコの言語による理解と表現は正確とはいえません。

●ネコは知ったかぶりをしている事があります。

●ネコの時系列の把握は、あいまいです。

●ネコが理解できていないカタカナの単語は頭の中で漢字に変換してください。


●ネコなので、末尾の「なの」は「なのン」と発音するイメージです。





-------------------------------------------------------------------------------------------------------------


Scene1

 私は猫なの  sight of マー




 私は、猫なの。 名前はマダナイ。

 でも、そう呼ばれる事は、ほとんどないの。


 キョーは、マーって、私を呼ぶの。


 キョーは、ニートなの。

 でも、みんなは、ニートなのが不思議なの。

 何もわかってないの、ダメダメなの。


「トーダイいったのにニートって……そのメガネは、ダテなの?」


 違うの、トーダイはピカピカで、メガネは縦にかけないの。


「ダイガクに残って、ケンキューしろって言われたの断って、ニート?」


 ニートは最高なの。


「トライアスロンでタイカイシンキロクって……ニートのくせに何してんのよ?」


 ニートは何もしないだけで、何でもできるものなの。


「ハ・タ・ラ・ケ! ケーサツでケンドーのキョーシになれって誘われたんだろ?」


 ハタライたら負けなの。


「いくらカブでオーガネモチになったからって、ニートはないだろ?」


 カブはダイコンより美味しくないから、オーガネモチに意味はないなの。


「ニートになって何してんだ? ムシャシュギョーか? このビル、オマエのなんだろ? 一階でドウジョウ開こうぜ!」


 ドウジョウするならカネをくれなの。


「チートでイケメンなのにニートなんて、おかしいだろ? ……俺とは違うんだからよ」


 おかしくないの。 みんな、誰とも違うの。


「ニートっていうのはシャカイのゴミよ。アナタみたいな人には似合わないわ」


 キョーはニートの中のニートなの。 アナタとは違うの。


「やっぱり、猫より犬を飼うべきだよ」


 オマエは、敵なの。 犬、滅ぶべしなの。


 わかってない色んな人が言うけど、ダメダメなの。 マーは、わかってるなの。




「シューショクのためにダイガク行くほど、カネにフジューしてないし、メガネはカンケーないよ」


「人のノーリョクをあてにしたキョージュの下でケンキューしたってろくなことはないさ」


「ウンドウブソクは体に悪いからね。 シャチクになってストレスでブクブク太るよりマシだ」


「コ・ト・ワ・ル! コッカのイヌはショーにあわないんだ。それにボクのは、ケンジュツだしね」


「逆だよ。 ボクはニートになるために、カブでモクヒョーガクを貯めただけさ」


「ボクにとってニートは生き方そのもので、ブジュツはシュミの一つでしかないんだよ。 でもキミが、ドージョーケイエイをやりたいならカクヤスで貸すよ」


「ニートである事をハジているなら、キミにニートでいるシカクはない。働くんだね」


「いや、ニートは自分自身のオウであるということさ。ノーベルを真似て、ザイダンを造ってノブレス・オブリージュはハタシタ。キミもヘンケンを捨てて、ニートをメザスんだね」


「犬もいいけど、マーが嫌ってるからね」


 わかってない色んな人を、キョーは、笑って相手にしないの。 キョーも、わかってるなの。



 キョーがニートを止めないのは、あたりまえなの。

 だってニートっていうのは、いつも、お家にいてくれる家猫わたし同類なかまってことなの。


 キョーは、ずっとずっとナカマなの。

 一緒にお家なわばりを、守るの。


 お家なわばりは、サイジョーカイのキュウエルデーケーなの。

 一人と一匹には広すぎるくらいだって意味なの。


 でも、もっと広い世界なわばりだって、キョーと一緒なら守れるの。

 キョーはパトロールで時々、出かけるの。

 だから、時々、外に連れていってってキョーに頼むの。

 


「ん? 外に出たいのかい? でもコーツウリョーから考えて、マーが帰ってこれる確率は低い。だから、夏への扉は開かないよ」


 私がキョーを置いて、どこかに行っちゃうと思ってるのか、キョーは確率は低いダメダメだって言うの。

 ぜったいに、そんなの‘確率は低い’のになのね。


 それでも頼んでたら、いつかは連れてってくれるだろうって、その日も窓の外を見てたの。


「外に出たいのかい? でも────」


 いつもみたいに、キョーが言って、でも途中から声が聞こえなくなったの。

 それで、なんか首のところがザワザワで毛が立ってきたの。


 キョーのほうを見たら、空気に黒い穴が浮かんでてキョーがいないの。

 フーッてしてたら、穴は消えちゃって、キョーはいないまま。


 キョーは帰ってこなかったの。

 私は、リクにもらわれて、マーじゃなくなるまで待ったの。


「ホント……クロを置いてどこ行っちゃったんだろうね。 センパイ」

 リクは、私を見て時々、そういうので、私もキョーを時々、思い出すの。


 でも、私は、もうマーじゃないから、キョーとマーのお話は、これでオシマイ。

 バイバイ、キョー。


----------------------------------------------------------------------

あとがきに代えた

次回予告



ルポライターなんてヤクザな仕事をやってると

常識なんてものが、どれだけ嘘にまみれてるかが判ってくる。


今の世の中、声の大きなものが宣伝した事が事実で

金と権力と、それで造られたコネだけが大きな声を上げられるようになっているものだからだ。


それでも、そんな誤魔化しまみれの世論とは別の《真実》を示す常識もあるものだ。

俺は、そういったもののために、この仕事をやっている。


だが、ある男の失踪を追う事になった俺は、常識というやつを、またしても疑う事になる。



《芳桜院 境夜》──それが、俺の常識を壊した男だ。





次回


Scene2  大富豪、謎の失踪を追う(仮題)  sight of 名もなきフリーライター 



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る