彼の推理は、考え過ぎてる。

いましん

第一の事件……アパート完全密室殺人事件

事件編

総当り探偵、草辺

「先生!すみません、待ち合わせに遅れてしまって。」

「寝坊でもしたのか?それとも渋滞?あ、事故かな?道中ゴジラやブラックホールが出現した可能性もあるな。」


……えっと...この一風変わった……いや二、三風変わった人は、探偵をやっている。悔しいことに名探偵だ。そして私の心の先生でもある。


「ゴジラとブラックホールは……無いんじゃないでしょうか。」

「チッチッチッ...だから君は三流なんだよ。あらゆる可能性を想定しておくのが真の探偵だよ。」


にしてもそれは無いとは思うが、適当に頷いておく。探偵というのは、推理さえできれば性格はなんでもいいのだ。そう自分に言い聞かせる。


「で、何で遅れたんだい?」

「途中で道を訊かれまして……」

「…………」


沈黙がしばらく続いた。





私の名前は、芦州あしす たん。探偵になるべく修行している16歳。

『美人すぎる探偵』という肩書きを手に入れ、将来遊んで暮らすのが夢だ。

理由が酷いとか言うな。

現実を見ていると言え。


先生の名前は、草辺くさなべ りゅう

ちまたでは、総当り探偵と呼ばれている。

言われは、さきほど見た通りだ。

何でも総当りで考えていくのだ。

まあ効率の悪いこと悪いこと。

でも最終的には真実に辿り着いているので、尊敬はしている。




「さて、今回の事件の場所に行こうか。」

「はい!先生!!」

「ところで、どうやって移動しようか。バスか電車かタクシーかレンタカーか徒歩か飛行機か船か……」

「で、電車で行きましょう!」


この男は、放っておけば無限に選択肢を提示してくる。だから止めてあげないといけないのだ。

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