遅刻したら交通事故を目撃した件

じりりりりりりりりりりりりりり。

うるさい。

ぽん。

ぴたっ。



じりりりりりりりりりりりりりりり。

うるさい。

ぽん。

ぴたっ。



じりりりりりりりりりりりりりりりりり

うるさ……ん。あれ、えっと。

うわ、こんな時間かよ。


服を着替え鞄を持って家を出る。朝飯はコンビニかどこかで……財布を忘れてきたから一旦戻る。

まだ今日は始まるのが遅い日で良かった。昨日は朝イチから仕事だったけど、今日は昼前からだ。セーフ。間に合えばだけど。


いつもの、人通りの少ない交差点に来た。ここの信号、長いんだよなぁ……と思っていると、信じられないことが。

事故。

猛スピードのトラックが乗用車に激突。大激突。スクープ。

まぁ、撮るよね。それが雑誌記者としての性だと思う。

二十数枚撮ったあたりで、そうだ怪我人と思い出し、電話をかける。119だっけ110だっけ。118は……海上保安庁。ええい、両方かけてしまえ。


警察からは119番にかけろと怒られたけど、まぁなんとか通報は完了。よしこれでOK。会社へ……いやいや、応急手当くらいしろよ。えっと怪我人怪我人。


……

うわなんかあったってかいるってかなんかやばいかんじのいたこれはむりだむりだごめんなさいないぞうとかそんなかんじのぞうきてきななにかでてるしこれはしろうとにはたいしょしきれませんわごめんなさいがんばってくださいもうすぐきゅうきゅうしゃきますから。



事故の被害者を見た瞬間これだけの思考が頭の中を駆け巡った。俺文才あるくね?って後で思ったけど、その時はそれどころじゃない。流石に。

とにかくびっくりした。人ってあんな状態になるんだって思った。

微かに息があって良かった……のか?あれで死んでしまったら……罪悪感というかなんというか……

まぁいい。俺は俺の出来るだけのことをした。これ以上は、知らん!


で、結局救急車が来るまで写真を……もとい、怪我人を保護した。救急隊員が彼を運んで行った後、俺は声を掛けられた。警察官。え、なんで。

理由を訊くと、かなり大きな事故だったので事件性がないか捜査しに来たらしい。目撃者は俺だけ。写真も撮った。そりゃ話聞きに来るわな。


幾つか質問され、見たままのことを答えたが、反応は悪かった。大して重要なことが無かったからだろう。ってか、突然起こったしちゃんと見てねえよ。

そうそう、その警察官がポロッと漏らしてたんだけど、トラックの運転手が見つからないらしい。そういや俺も見ていない。まさか、死……ブルブル。俺も、もしあれに巻き込まれてたら終わってたよなぁ……生きてて幸せぇー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る