あなたの願いは誰かの願い

Dod@

prologue



 ──貴方が側にいてくれたから、ほっとした。

   萎んだ心を潤してくれたのは貴方だから。

   目を閉じたって、口を噤んだって、息をヤめたって、

   涙は溢れてくるのです。

   あなただから──




    Prologue


 高校生ぐらいの女が泣いている。泣き叫んでいる。

 その叫びは誰に向けられているのだろう。


『ああ、私か。きっと私だ』


 名前を呼ばれたわけではないが、むしろ、だからこそ私なのだと確信した。

 思い出す。目の前で泣いている女のその姿は、以前どこかで出会った少女の姿と重なった。


『昔に約束をした……。アレはそういう約束だったはずだけれど……』


 数年ぶりの再会となるが女の前に姿を現すことにした。女は驚いた顔で私を仰ぎ見て、溢れ出た悲しみを拭い、そして以前とは違う落ち着いた口調で改めて私に話しかけてきたのである。


「あ、あの。──さん、お久し振りです。今、全てを思い出しました。こういう約束をしていたんですね」


 私はこの女の記憶の一部を捏造ふういんしたことがある。だからその時が来たらこうなることはわかっていた。


「あのっ。そのっ、もう少しだけ時間をください。あの時の約束は守ります。でも、その条件を少しだけ変えさせてください。ええ、身勝手なのはわかっています。でも、これは私にとっての罰です。貴方に頼ってしまったのだから。ソレが善いことなのか、悪いことだったのか昔の私には考える時間さえなかったけれど、今ならわかる。だから、その責任をしっかりと取ろうと思うの。条件はこうよ」


 女は大きく息を吸って、吐いて、そっと一言だけ。



「私が──ます。それでお願いします」



 カーテンを閉めきった部屋の様に人を孤独にさせる暗い夜のこと。

 その条件を聞き入れるかは私の自由だが、今回は女の勇気に免じての二度目の条件ねがいを聞き入れた。

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