第11話【セフィリアとの午後】

「あれ?さっきの親切な方?」


「『さっきの怪しいローブの人』」


「っひどいです。いえ怪しいですね。そうですね済みません、私も周りの方から注目されているようなとも思ってましたから少しおかしいって思ってました。

ですがまさか真正面から仰られるなんて。ぅうう…」


しまったつい本音が、でも仕方ないよね。事実怪しいよ。周りにそんなやついないし余計に目立つよ。


(『半泣きっぽいですよ、あー女性を泣かせましたね~。流石マスターです!』)


(「なにが流石だよ。どういう意味だ!ってかお前も言ってたろうが、同罪だ!」)


「済まない、つい本音が。いやまぁ確かに怪しいけどなにか理由あるんだろ?人間それぞれだ、秘密なんてあって当たり前さ!

どんな理由か分からないけれど、ほら…あれだ!似合ってるよ!」


『ですよー、ローブの上でも分かる女性らしいライン。雰囲気も間違いなく美人さんです!こんな往来じゃ隠したくなる気持ちもわかりますよー』


「ありがとうございます妖精さん、お世辞でも嬉しいです。ですが金髪さんは酷いです。慰める言葉が心に突き刺さります。似合ってるってなんですか?

イヤですよ」


「金髪さんってアンタ…うぐぐ」


『マスターデリカシーないですよ!すみませんローブの人。あと私の名前はアーシャです。よろしくお願いしますね!』


アーシャにデリカシーないって言われたくない。お前はもっと俺に気を使え。上げて落とす天才のくせに。


だが流石コミュ力高い、これが妖精の実力か。自己紹介までしてやがる。おい名前言うなって面倒なことになるだろ!


「アーシャさんですね?私はセフィリア。セフィリア・ロー…いえセフィリアです。よろしくお願いします」


自己紹介をしつつ、彼女はローブのフードをとった、まず始めにうつったのは輝かんばかりの美しい銀髪。

こちらを見たのは宝石のような蒼い瞳。鼻筋の通った綺麗なんて言葉では表せないような顔だった。


『わぁー綺麗ですねぇ。めちゃくちゃ綺麗です。ちょっと信じられないくらい綺麗すぎます!』


「そんなっ、うーありがとうございます。でもアーシャさんも可愛いですよ。正直羨ましいぐらいです」


『わかりますか?この愛らしさが!マスターも見習ってくださいよ!こんな可愛い子を弄るなんて許されませんよ、もっとチヤホヤしてください!』


言葉を失ってしまった、彼女の美しさに見惚れた。魅了されたように見ることしたできな…違う、違う!冷静になれ思考を加速させろ!


こいつは、先日の襲われてたやつかっ!ァア見惚れるなぁ!こんな偶然あるのか?偶々助けたやつを今日出会うなんてそんな馬鹿な話あるわけがっ。


こいつの目的は何だ?まさか昨日の件バレたか?【ハイド】中の俺を視認するなんて無理だろ。万が一術式を破られていたとしても俺が気がつかないわけがない。


看破の術式発動を俺もアーシャも見切れないわけがないんだ。ならやはり偶然か?…わからない。



「大丈夫ですよ?」


その声に驚いて彼女をみた。


「なにがあったかはわかりませんが、大丈夫です」


「…意味がわからんよ。なんのことだ?」


「いえ、なにか不安そうだったので。特には意味はありませんが…ですが大丈夫だと思います。理由はありませんけど」


その声になぜか安堵する、理由もなく、意味もなく、根拠もない、それなのに納得できる。そんな印象を俺は持ってしまった。


「ふぅー、イヤすまない。少し驚いてしまった」


『なんですかぁ?やっぱ惚れちゃいましたか?セフィさん綺麗ですもんねープンプンです!(マスター大丈夫ですか?)』


「セフィーさんってお前親しみ持ちすぎだろ初対面だぞ(大丈夫だ、少し焦っただけだから)」


「セフィーですか!いいですね!そんな風に呼ばれたことないんで少し嬉しいです。よかったら今後そうお呼び下さい」


『セフィーさんセフィーさんセフィーさん!私もアーシャちゃんでいいですよ!(セフィーさん昨日の方ですよね?)』


「なんですか?アーシャちゃん」


『私たち喋り方そっくりですよ、妖怪キャラ被りですよ~(バレてたらこんな初対面は感じにはならないんじゃないですか?少なくともなにかしらアクションありますよ)』


「アーシャそれはない、全然似てねぇよ。彼女はそんなハイテンションではない(そうだな…バレてたとして知らぬ存ぜぬを貫こう)」


「いえいえ、嬉しいです。私今まで友達いなくて…こんなに良くしてくれるなんてあの、アーシャちゃん良かったら友達になってくれませんか?」


『勿論もう友達ですよ!マスターは違いますけどねー!(それでこそマスター図太いです!)』


「ええ!?あの…その…よかったら貴方も私の友達になってくれませんか?」


「ついでみたいで傷つくわぁ。名乗ってなかったな。シオンだ、こちらこそよろしく頼む(とりあえず様子見るしかない探るぞアーシャ)」


「はい、シオンさん。私同年代の友達なんて初めてで、セフィーって呼んでください!」


はっ、なるほどボッチか。俺も今ではボッチだぜ、でも日本ではちゃんと友達いたからな決してボッチなんて存在じゃなかったし!


高校からの親友もいたし、専門では違うクラスの連中とも友達多かったし。


…あれ今なんか可笑しいことが聞こえたような?


「同年代…?え?俺14歳なんだけど」


「?私15ですよ!1つしか違いません。なら一緒みたいなものですよ」


嘘だバカなぁ、1つしか変わらない。いや年齢設定自体適当だけど!でもこの差!頭1つ分以上違うんだけど。


いや違う!こいつの発育がいいだけだ、どう考えても20以上に見えるこいつが悪い!


『っぶほ…発育の差は残酷ですね。この身長差と大人っぽさでたった1歳しか変わらないだなんて。っくは、あははははは!』


「ぬうううううう、ふっふっふううう、老け顔!」


思い切り指を刺しずばり言う。


「そんな酷い、気にしてるのに…そんなに老けて見えますか?髪もこんな色ですし…いえこの髪は母様譲りですし自慢ではあるんですけど」


セフィーは俯き悲しそうにしてしまった。


『(マスター今のは不味かったですよ…思いっきり地雷です。)』


「(…やべぇどうしたら)」


「うう…でも、若いときに大人っぽい顔は歳とってもそのままっていうし。大丈夫よ、大丈夫」


すっげぇ言いきかせてる。まさかの地雷原だったとは、にしても彼女は打たれ弱いなぁ。冗談を本気にとるなんて。いや、すみませんあれは冗談にならなかったね。


「すまない、元気出してくれ。俺が悪かったから。頼むよ」


「いえ、大丈夫です。事実ですから」


『時に事実が本人を苦しめる、それは紛れもない真実である』


お後がよろしいようで!









「大分話込んじゃいましたけど大丈夫でしたか?」


そういえばそうだった。俺は図書館を探してるんだった。でもまったく見つからないわけで、後日にしたくなってきた。


『私たち図書館探してるんですけどセフィーさんどちらにあるか知りませんか?図書館があるって話だけでどこにあるか知らなくて散々探してたんですよ』


ナイスだアーシャ!もう探検は今日のとこはいいから目的地に着きたい。


「それなら私も良くいくので詳しいですよ。実はこの近くにありまして。私もいく所だったんですよ。一緒に行きましょう2人とも」


「そりゃあ偶然だな。いやよかった。頼むよ」


『お願いしますっ」









図書館はあそこから本当に近くにあった。市民図書館ぐらいの大きさで見た目は博物館みたいな建物だった。


「ここが【ヴァレイグ図書】ですよ、ここには普通の本から魔法の指南書まで置いてあるとこで私のいき付けなんです」


「そうなのか」


「はい!見ててもあれですし、入りましょう!」


張り切っているのか彼女のテンションが高い、本当に今までボッチだったんだなとか思ってしまう。






受付に保証金として金貨1枚取られた。帰るときに引換券と交換してくれるらしい。

ワイバーンの魔石売ってよかった、図書館まできてとんぼ返りはダサすぎる。


ちなみにディメンションが掛かった魔具の持込は禁止らしい、だがアーシャは術式刻まれた魔具ではなく実際には魔具ともいえなかったりする。

魔力反応はあるためそこはちゃっかり隠蔽済みだ。





案内板もしっかりあった。どうやらジャンルでしっかり整頓もされているらしい。


目的の本を探してちゃっちゃと終わらせようと思う。


「俺は図鑑と歴史書に用事あるから、セフィーは?」


「私は魔法書です。これでも魔法使いでして。勉強してるんですけどなかなかうまくいかないですね」


「セフィーはまず魔力制御からしたほうがいいかもな苦手なんだろ?やっぱ自分もそうだが基本が大事だよ」


「なるほど、ですね。今度改めて練習してみます。あ、時間とらせて済みません。それではまた後で」


また後でか、ついついここまで一緒しちゃったけど大丈夫かなぁ。やばかったら全力で逃げよう。


それよりも本だな、植物図鑑と魔物と動物の図鑑。それと歴史書。やることは多い効率よく進めないとね。








「ここでいいか、よいっしょっと」


『マスターおっさんくさいです』


「私語は禁止です」


『イエス、マスター』


本は持ってきた、そのままの名称だったのは助かった。どうやら図鑑系はアーシャがページごとにスキャンで情報を取り込むらしい。


分厚い本だが任せよう。


「俺は歴史書だね、ここ1000年いったいどんな感じだったのやら」






夕焼けの光が窓から入り込んできた、そういえば今は春らしい。どうやら四季はあるようで。ちなみに感覚的に1日は24時間っぽい。


そこらへんも意味不だが、そんなものかと納得するしかない。世界の法則まで理解できるわけではないのだから。


「アンニュイな気分ってやつ?本読んで頭良くなった感じだわ」


『気のせいですマスター』


横で猛烈な勢いでページをめくっていたアーシャも1段落したようだ。正直周りの目が厳しかったし助かった。


『それでマスター?ここ1000年はわかりましたか?』


「まぁ大体?それは夜にでもプレハブで語ってやるよ。もう日も落ちる。セフィーに一言いって今日の棲家でも探そうか」


『イエス、マスター』


本をあった場所にかたずける、そんな時間も掛からず終わりセフィーを探し始めた。


「おっと?なんか揉めてんぞ?セフィーと執事か?」


『みたいですねぇ、これどう考えても勝手に抜け出した令嬢と傍付きの執事が争っている図ですよねぇ』


「嫌な予感しかしないねこりゃ、見てみぬ振りしてさっさと去るか?」


『セフィーさんが探しますよ?それで大事になったらそれこそ不味いですよ』


「だけどさぁー「シオンさん!」向こうから来るのは予想外だったよアシャラッシュ…」


『だれがアシャラッシュですか…あの執事さんイケメンさんです。でも怒ったイケメンさんは怖そうですね』


本当だよ。めっちゃ怒ってるよ。あ、目が合った。すげぇ警戒されてるんだけど。つかこいつも身長高い。


目算で185cmほど、黒髪紅眼のスラリとした美丈夫だ。多分年齢的には20前後、まぁセフィーの前例があるし断定はできないけど。


「よかったまだいらしたんですね。クラレンスこちらシオンさんとアーシャちゃん、街で一緒になって図書館探してたから案内してたのよ。決して逃げ回ってたわけじゃないの」


「セフィリア様、いえ申し訳ありませんシオン様アーシャ様、私はローレイン家に仕えるセフィリア様付きの執事でクラレンス・ヴェクシスと申します。

セフィリア様が大変ご迷惑かけまして申し訳ありません。なにぶんセフィリア様はこの通り自由な方でして。何度もお屋敷を御一人ででては街に行く始末。

保護していただき誠に感謝しております」


「いえ、こちらもここが分からなく右往左往してたとこをセフィリア様に助けて頂いたので」


『ですよー、いい歳して迷子してたとこをセフィーさんに助けて貰ったんです』


「むう…シオンさん?私のことはセフィーで構いませんよ」


おいおい無茶を言うな、あからさまに向こうは警戒してるだろう?その場面で親しい感じだしたらやばいから。

てかアーシャ空気読めー、様つけろこのデコスケがぁ!


「いえそんな、済みませんがセフィリア様は貴族様ですよね?お付きの執事もいらっしゃいますし」


「ぁ!いえそうなんですが。申し訳ございません…私セフィリア・ローレンスと申します。貴族です。

ですが、お友達に様付けはやめてください。できればこれまで通りでお願いします」


やーめーてー、クラレンスさん睨んでるから。もう腰に帯びてる剣に手を置いてるからぁ!相手が慇懃無礼な態度とってるのわかんねぇかなぁ。


どう考えても近づけたくないみたいだから!


「それは…」


クラレンスさんを見る、表面上は微笑している。けど目は笑っていない。セフィーを見る、悲しそうに潤んだ瞳でこちらを見ている。


こんな所でこんな目に合うなんて。てか馴れ馴れしいのはアーシャだったろ?俺に当たるのヤメテよ。


「それは…セフィリア様…」


ジッと見てくる


「セフィリアさん」


(『もうちょっとです、マスター頑張ってください!』)


アーシャの無責任な言葉が突き刺さる。セフィーがまだジッとこちらを見ている。クラレンスさんは眉間をピクリと動かした。


「ぁ…う、セフィー…リア」


「あとちょっと!」


ちょっとセフィーさん言葉遣いが乱れてますよ。


「セフィー」


「はい!シオンさん!」


負けた、美女顔で泣き落としは素晴らしく卑怯だと学んだよ。


クラレンスさんは眉間をピクピクさせている。微笑は解いてないが魔力がギンギンしてる。


あ、すごいこの人120万以上の魔力値だ今まであった人で2番目だわ。


勿論一番はセフィーである。







「セフィリア様そろそろ夕日も沈みます。屋敷へ戻りましょう」


「そう…ですね。シオンさんアーシャちゃん申し訳ありませんが今日の所はこれまでのようです。もしよかったらまた逢ってくれませんか?

10日に半分は大体ここにいます。よかったらお屋敷にもいらしてください。また一緒に街を歩きましょう」


「そこは、光栄だ。勿論機会があればよろしく頼むよ」


『はい!私も楽しみにしてます!今度は一緒にご飯食べましょう!』


「シオンさん、アーシャちゃん。うん、絶対だよ?約束したからね?」


「ああ、それじゃな」


『バイバイです』


「あの…できれば、またねじゃ駄目ですか?」


また随分可愛いことを言う、美女みたいな見た目に騙されたがセフィーも15歳の少女ということか。


アーシャと顔を合わせつい笑ってしまった。


「『またね』」


「はい、また今度!」


クラレンスさんはお辞儀をしセフィーを引きずっていった。空気を読んでくれたらしい。最後まで威圧されていたけどさ。


「俺たちも棲家でも探しにいくとしようか」


『ご飯は!?』


「ワイバーンのステーキで」


『はーい』


俺たちは誰にもばれないよう裏路地にはいり【ハイド】で姿を消し外壁を越えるため跳躍した。


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