第5話 値段をつけよう

 こうして完成したコピー本を、今度は頒布しなければなりません。

 頒布とは、制作費程度の対価をもらってお譲りするという、同人誌の世界での麗しい伝統です。また僕たちは商売をしているんじゃない。という意思表示でもありますので、ぜひ販売と言わず、頒布と呼びましょう。

 おおよそ、コピー本とオフセット本にはかかる費用の違いから、だいたい以下のような相場感があります。

・コピー本なら最高300円、ふつうは200円。

・オンデマンド本なら最高600円、ふつうは500円。

・オフセット本なら最高1000円、ふつうは700円。


○では一冊あたりいくらかかるのか

 同人誌を制作するに当たって、一冊あたりいくらかかるかは重要な問題です。

 一般的なコピー本であれば、両面印刷を用いて1枚で4ページを刷ります。本文が4ページ単位で刷られ、これに表紙が表1(表紙)~表4(裏表紙)で4ページ分刷られます。これにかかる費用はページあたり5円です。おおよそ表紙込み28ページのコピー本なら140円で作れる計算になります。

 この文章で解説している豆本形式で作ったとしましょう。こちらはA3用紙に8ページ印刷します。片面印刷ですので、これにかかる費用はページあたり1.25円です。おおよそ」表紙込み28ページの豆コピー本なら35円で作れる計算になります。


○コピー本は最高値300円の範囲で

 コピー本といえども値段付けは重要です。

 正論をいえば、あくまで同人誌の目的は「同好の士に届ける雑誌」ですから、同好の士に届く確率を元に、値段付けは考えるべきです。

 必ず対象の人に届くのであれば、価格は0円、超小部数でよいかと考えています。そうでないならば、同人誌頒布においていつか同好の士が現れることを願いつつ、同人サークル存続、次回作作成を念頭に入れた値段を付ける必要がでてきます。

 ただし、頒布する予定のイベント会場取得費用、移動費などをコピー本頒布のみでペイすることは非常に難しいです。これを達成できる作戦があるとすれば、なんでしょうか。それは次の項で説明しましょう。


○(初回の)赤字は気にしない

 結論としては「初回での赤字は気にしない」と言うものがあります。好きなことを書きつつ、さらに参加費用上のペイラインを越えるのは中々に難しい行為ですので、初回についてはまずは同人作家デビューができたことを喜びましょう。

 その上で、将来的にペイラインを目指すというのであれば、好きな事を書きつつ、さらに利益化の戦略をプラスする作戦が必要です。

 たとえば、たくさんの種類の頒布物を用意する作戦などはこれにあたるでしょう。サークルスペースに置く同人誌の種類を5倍に増やしたとします。それぞれ違う内容で一冊200円の冊子が5種類あれば、買い手一人当たりの単価は最大1000円になります。20人くれば2万円です。一冊あたり140円で作ったとして、6千円の次回予算獲得です。ペイラインが見えてきませんか。

 というわけで、次回参加の時にはたくさんの種類の頒布物を用意しておく、のが一つの手としてあります。

たくさん作る中にジャンルのツボを押さえたものがあったり、シリーズものとして統一ジャンルの中での様々なバリエーションに挑戦したりするなども、有効でしょう。

 目指すは「サークルスペースに来場された方がまとめ買いをしていく」情景です。それがいつか、あなたの好きがメガヒットする買い手さんとの出会いに結びつくことでしょう!

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