「復活の乙女」その2
全部だ。
と言って肘掛け椅子を蹴り飛ばす勢いで王子は叫んだ。
「市場中のありとあるリンゴを全て! 買い取って城に運ばせたんだ。それからというもの、朝に昼に夜に、リンゴ、リンゴリンゴ!」
大きなため息。
「ほとんど毎日、リンゴパーティだ」
うんざりだ……というため息まで伝染しそうだった。
しばらくリンゴを見るだけで吐き気がしたそうな。
「ボクも、同じ料理を何日も出され続けた事があります。しかも母は未だにボクの好物だと勘違いしてて」
「そうか。なんで親ってああなんだろう」
「なんの嫌がらせかと思いますよね」
「君も苦労してるな……」
「いえいえ、ボクは王子様級では……」
「言っておくがあれ以来、うかつなことが言えなくて、学校へもろくにゆけなかった」
「それは……お寂しかったでしょう」
「いや……学校へは普通に勉強のために通っていたからな。毎日家庭教師と顔つき合わせるのにも飽きて、ふと何かが足りないと」
王子は背後を見返って彼女を見た。彼の前髪がさらりと揺れて、額に青い鱗状の痕が現れた。竜殺しの烙印……。
「うん、でも、過去のことだ。今は……リック、君には親友はいるか? まだいないのか」
アレキサンドラはとまどった。
「そうとも限りませんが。いきなりですね」
「親友とは常に一人につき一人ずつと決まっているのか?」
少女は無言で返した。意図不明のため。
王子はのたまう。
「君に、私の親友になってほしくてな!」
王子がつきだした紙には誓約書とあった。
後にこの話を知った人々は全員、その場にリリアがいなくてよかったと思った。
彼女は真っ向から全力で受けあった。
『一生王子の花乙女として傍らにおります』
と……
が、その場に居合わせた人から人へと話が伝わり、花乙女はなんと王子のものに、との誤解が生まれ、三日間アレキサンドラは王宮であてがわれた部屋から出られなかった。
と、いうのは後のこと。
「わかったことが一つあるんだ」
いったいなにごとかという目で王子の歩みを見守りながら、リッキーはおさえていたドアを閉めた。
「君もそうなのだろうだから、話すのだが、これを見てくれ」
リッキーはその額の青い印を見てとり、人払いを頼んだ。
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