「復活の乙女」その3

「これは心が反転する呪いだ。どうして気が付かなかったと悔やまれるが、いったいだれがこんなことをしたと思う?」



 リッキーには心当たりもなければ、思い当たる出来事も全くなかった。王子は一人、力説する。



「だって剣と学問だけしてた私が、町の広場で竪琴奏でるって妙だろう?」



「ボク、わたくしはいつからか樹に昇れなくなりました。お城に上がるときも成り行き任せでした。そして男性が怖くなりました」



 見知った方や王子は別ですけど、と付け加える。



 咳払いをして「人は変わるものです」と……こぽ、とお茶を暖めておいたティーカップに注ぐ。



 王子は急に注意深くなって言った。



「では、以前の君は木々を猿のように昇ったり、自分のことは自分でカタをつける質だったというわけか。で、私のことは?」



 怖かったのか? との問いに少し考えてリッキーは口を開いた。ここで怖くも何ともない、と言ったら台無しだ。



「ええ、何しろ一国の王子様ですからね」



「で、今は私のことは何とも思わないというわけだな」



 彼女は急いで否定した。



「そんなこと! とんでもございません!」



「残念だ」



 まあいい、とポットを取り落としそうにして突っ立っているリッキーを見て、サフィール王子は笑みをこぼした。



 リッキーはこくり、とのどを鳴らした。

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