執行者の啓示 (1)
“主は天を押し曲げて降りて来て、私を救ってくださいました。 御足の下には、暗やみがたちこめていました。”
―詩 篇 18:9
“恋・・・恋は動詞なの・・・恋はするものなの・・・”
―千尋
下校時間のチャイムが学校の壁に木霊した。屋上から見上げる極上の夕焼けの下は校門から出て行く生徒の頭の天辺で賑わっていた。無関係に北風が吹く春の都会は妙に罪深そうだった。身震いをしながら腕時計を見つめる、集合時間がとっくに過ぎていたのに拘らず人影そら見当たらない屋上で一人ポツンと佇む。テフロンで構造されたドアが後ろで開いたそこから出てくるのは千尋彼女だけだった。
“一人だけなの?他のメンバーは?”
“私一人じゃ退屈?”
千尋は含み笑いをした。
“ううん、ただただ聞いてみただけ、気に障った?”恐る恐る尋ねてみる。
“別に、それよりどこへ行く?”
“え?”
倶楽部会にでも招待されたはずが突如町遊びにでも変更したのか?
「てっ、それより倶楽部会は?」
気掛かりなあまり既いてみる。千尋は待っていたかのように気軽に答えた。
「あぁ、それなら来週に延期しておいただから今日は二人で商店街を少し観察してみない?」
千尋にしては割とオープンな誘いに乗って俺は無言に賛成した。
“しかし、どうゆう目的で?”
「ニッキーここに引っ越したばかりでしょ?慣れるようになれるまで私が町を紹介してあげる!」
ニコニコとつま先を立てて背伸びをしたあと俺の視線に会う高さまでピョンっと跳ねた。メランコリックな惰性で内向的な千尋の素性はいつの間にか消えていて浪漫的に寒気がした。
「その無邪気な大人気さの裏には何を着染めているのか?こんなの通常の千尋じゃない・・・いや、そんなパラノイヤな疑いを冗長してどうする?」
俺は必至に頭からこの妄想を振り落とした。
「じゃぁ、行こうか?」
雰囲気に乗って俺は言った。
「了解!!!」
千尋は陶酔判然に階段を駆け降りた。
詩篇の執行者 Luke Heistman @Heistman
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