第145話 今日も明日もボールに大地は回って歌って ③
「
三浦知良だ。
フランスに帯同しながら、22人の枠に入れなかった。W杯に出場したいという気持ちはおそらく誰よりも強かった。
仏W杯の亡霊に取り憑かれ、恋々と現役にしがみつく、客寄せパンダ。
この亡霊はどうしたら倒せるのだろう。
サッカーは現役を引退したらおしまいじゃない。指導者として、サッカーを続けるというやり方に目を向けるべきだ。指導者もまた、深淵でやりがいのある舞台だと思う。
指導者三浦知良を一日でも早く見たい。今以上に応援する人も現れるだろうし、Jは盛り上がるだろう。
バルサは監督としてバルベルデを迎え、上々の船出となった。
2年目以降のルイス・エンリケはMSNを活かすための縦に速い攻撃に傾倒した。しかしこれではボール保持率が上がらない。守備の時間が増える。SBもカウンターが怖くて上がりにくい。ワイドな攻撃が影を潜め、バルサらしさを失った。
バルベルデはポゼッション主体に戻した。リーガのチームが皆、ショートカウンターを狙うため悠長にパスを回している時間はないからそこに注目されることは少ないがね。
SBのJ・アルバが生き生きと左サイドを駆け上がる。で、ネイマールがアルバを無視し続けていたことも今になって顕在化した。
イニエスタも輝きを取り戻した。フェルメーレンも打って変わって安定感のあるプレーを見せている。監督の力に相違あるまい。
フォーメーションも様々で、特にメッシとスアレスの2トップが用いられることが増えた。パウリーニョも悪くない。懐疑的な目を向けられていたが、テクニックはないがバルサに足りない強さを補完し、精力的に動いてポストにもクラッシャーにもなれる。下手は下手で賢い選手の足にかかるとうまく使ってくれるものだ。
懸案だった右SBにはネルソンセメドを獲った。デンベレもそうだが、現状適応に苦しんでいる。だがデンベレには値段相応の潜在能力がある。じきに慣れるだろう。
冬の市場が開くとバルサはまたも動く。約218億円でコウチーニョを獲った。まったく、移籍金のインフレは止まらない。てかそんなにお金があったのか。
試合で見てみると劣化メッシだ。いや、いい選手なのだがキャラがかぶっていて相性が悪い。メッシがいなければ重用されていただろう。明確に
バルサで活躍するのは難しい。レアルマドリーでも同様に難しい。
マンUで21億7000万円の年俸を受け取ることになったアレクシス・サンチェスはバルサで実力不足と判断された男だ。
隣の芝は青く見える。他のチームにいる選手は魅力的に見える。
マスチェラーノを放出し、約16億円で195cmの22歳CBジェリー・ミナも獲った。デカいのにうまくて知性も高い。さすがにショートレンジの速さはないが許容範囲。ピケがいなくても高さ対策はおまかせだ。次第に起用が増えるだろう。
おそらく、バルサにとってはコウチーニョよりミナの方が有用になる。フェルメーレンは最近出番が増えていたが、移籍を希望するか、バックアップとしての立場を受け入れるか選ばなくてはならない。バルサが欲しいピースはウムティティの代わりになれる選手。足の速いCBだ。
バルベルデは本当にここぞという試合でしかベストメンバーで臨まない。手を抜く。積極的にターンオーバーする。
ターンオーバーはじわじわと効いてくる。自分の出た試合で、全力で走ることが出来る。次の試合のことを考えず余力を残さなくていい。レギュラー争いになり、より真剣に戦うようになる。疲労を回復させ怪我も減る。対戦相手からすればどんな対策を練ればいいか苦慮する。
難点は選手を揃えなければならず、財力が必要なこと。そしてフォーメーションをいじる度に新しい連携を構築しなければいけない。しかしバルサには賢くなければ居られない。そこで難渋することはないだろう。
メッシも30歳になった。リーグ戦のスタメンを外れることも受け入れ始めた。バルベルデとの関係が良好な証だ。
バルベルデとペップの一番の違いはアーリークロスの有無だ。ペップのときはほとんどなかった。ショートパス美学の追求者だった。しかし、それはバルサだったからで、バイエルンやシティでは違うサッカーを行う。
選手の適正に合わせたサッカー。柔軟な監督は器用に戦術を変える。とは言えこのまま放っておくとペップはどんどん技巧派選手を獲ってセカンドバルサをプレミアに誕生させるだろう。
ジダンも同様。自分の理想に
|No profit grows where is no pleasure ta’en《楽しんでやらなけりゃ、上手くなりゃしません》.
バルサのサッカーは楽しい。あんなサッカーやってたら、そりゃ練習だって頑張れる。
ルイス・スアレスは試合中に相手選手に噛みつく癖のある選手だった。FIFAは3回目に噛みついたスアレスを四ヶ月の試合出場停止処分にした。バルサはそんなスアレスを獲得。
移籍が決まると、とある
結果。スアレスはよい子になったのでもう噛みつかない。
バルサにはみんな優等生になってしまう作用がある。自分がシュートを打つよりも他人にパスしたほうが確率が高いと判断すれば誰しもパスを出す」
ショーテルが発言。
「コーチはさ、バルサ好きなのに、うちらにそういうサッカーさせなかったよね」
剣は吹き出した。
「お前なぁ、俺の話聞いてたか?
自分の戦術を選手に当てはめるんじゃなくて、選手の能力に合った戦術を考える方がいい。まあ、理想は胸に
現実的なだけでは良くないし、理想を求めすぎるのも良くない。
お前らは多国籍軍だ。日本人の適正だけではなく、すっげえ背が高い奴もいれば、めっちゃ走力に長けた者も居る。長所があるのだから俺の哲学に関係なく、勝つために最適なサッカーを探すべきだと思った。
例えば日本代表は、さっきの柏木の話のようにもっと異なるやり方で行くべきだと思う。
W杯最終予選が終わると、
今まで日本人が築いてきたサッカー観と異なるから、違和感を感じる者は多かったのだ。そのサッカー観は強さにつながっていると俺は考える。
ただし、これも相手次第。
例えばザックJapanはW杯3次予選、アウェーのタジキスタン戦、CFにハーフナーマイクを置いてハイクロスをとことん放ち続けた。空中戦がネックのタジキスタンDFはこれに対抗できず、惨敗。
もしW杯の対戦相手も空中戦が苦手なら同様に
最終予選、UAE戦の敗北からスタートして、カウンターを模索しながらオーストラリア戦でピークを迎えた。
手倉森誠の入閣が大きかった。ハリルと選手の橋渡し役として働き、よくハリルを補佐した。序盤ひどかったハリルJAPANも少しずつ整備されていった。ただ、手倉森に監督をさせてしまった方が改善したのではないかと思う。
親善試合では強いタックルは遠慮される。そうなるとフィジカルに弱みを持つ日本には有利にはたらく。特に対戦相手からすると
レベルの低いアジアに属する日本代表は強い相手と真剣勝負する機会が少なすぎる。
10月の親善試合はやはり不安にさせる内容。ニュージーランドにかろうじて勝ち。ハイチのスピードに慌てふためき、守備の甘さと精神面のもろさに救われ引き分け。
11月のブラジル戦は妥当な負け。
この試合、
これはない。観客を退屈させる時間をつくるべきではない。
では、どうすればいいか。
主審の役目を少しばかり委譲するべきだ。つまり、映像で判断する仕事を、映像室に待機する第五の審判に持たせる。複数のモニターを駆使して様々な角度からプレーを確認でき、短時間で正確な判断が下せるだろう。主審の負担も軽くなり、いいことづくめだ。
平昌五輪のアイスホッケーを観ていて思ったがこの間に音楽をかけてもいいだろう。
試合が終わって、ハリルと選手達は守備のやり方を相談したようだ。吉田はそれまで具体的な方法論を指示されなかったことを示唆している。ほとんどアドリブと基本的なセオリーで戦っていたということになる。
遅すぎる。し、適当すぎる。監督であれば具体的な約束事を準備するべきではないか。ふわふわしたまま、各々の判断で守り切れるのだろうか。
ベルギー戦。日本に対するショートカウンター対策は済んでおり、日本はチャンスをつくれない。だが日本の守備面は良かった。負けたのは個人能力の差だ。
12月。東アジア選手権。
前回、2015年中国開催のときもハリル政権下だった。結果は最下位。しかし就任直後ということもあって、看過されている。
北朝鮮、中国に辛勝ながら連勝。
韓国には1-4のボロ負け。味の素スタジアムの観衆に醜態を晒した。負けているにもかかわらず日本はリトリート。でも仕方ない。勝ち目がないのだ。すっかり萎縮してしまって、沈んだ顔。5点差をつけられたら、さらし者にされる。日本サッカー史の汚点になる。いや、もうなってるけど。
疑問だったのは植田直通のポジションだ。
右SB? 目を疑った。
ハリルにとってSBよりCBの方が優先順位が高いのだろう。あぶれた植田がSBに回った形。しかし植田の魅力は186cmの高さだ。196cmのCFキムシヌクに対抗するには少しでもCBに高さが必要だったはず。
植田に効果的な攻撃参加を期待する方がおかしいし、この采配はまったく理解できない。
ハリルは『レベルに差があった』『相手の方が格上だったと思う』と弁明。
ハリルは以前から韓国は日本より強いと繰り返し言っていた。事実かどうかは知らない。が、俺は違うと思う。
ハリルに日本人が活かせないだけだ。ハリルの目には日本人の良さが見えない。映らない。海外のメディアにはよく日本ではW杯は苦しい。と本音を吐き散らしている。
東アジア選手権は国内組の非力さを証明する機会になってしまった。
残念ながら日本人よりも海外のスカウトの方が選手を見る目は確かだろう。海外のクラブからオファーの来ない選手は力がない。まあ、海外に行くと力が出せない選手もいるが。
宇佐美貴史。
格上と戦うとき、彼は起用されるだろうか。
宇佐美はバイエルン時代、何度もリベリからお説教を受けている。
見込みのない奴を叱っても仕方ない。おそらく宇佐美の才能を認めている。そもそもバイエルンのスカウトに評価された時点で並の潜在能力ではない。しかし危険な位置でボールを受ける動きをしない、鍛え方が甘い、闘わない、走らない、では代表レベルに及ばない。
才能があっても努力が伴わなければ、ここまでだ。そして日本の指導者の敗北でもある。
ザックは『現時点で彼がクラブで出しているパフォーマンスだけを見れば、代表チームには値しない選手だと思っている』と言いながらも宇佐美を招集。1年5ヶ月後、『今、彼がやっているのは、2年前にできていたことを現在もやっているだけの状態だと思う』と言いながら再招集。
ザックの親心が、理解できるだろうか」
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