第4話 奇妙な団体

 その日、わたしは7歳になる弟、海斗と一緒に散歩をしていた。

 すると、道の先から団体がこちらに向かって歩いて来るのに気がついた。しかし、その団体はなんだか妙だった。皆、フードを被っており、そのフードの中の顔は動物の顔をしていたのだ。ウサギ、クマ、タヌキ、リス、キツネ等々、森に住まう動物の顔をしていた。正直言って不気味だった。

 道にはわたしと海斗、あの団体の他に人はいない。奇妙な団体はだんだんこちらに向かって歩いて来る。

「ねぇ、おねえちゃん。なんであのひとたちどうぶつのおかおをしているの?へんなの」

「シッ!静かに」

 団体を指差して言う海斗を黙らせる。

 そうこうしている内にわたしは団体とすれ違う。団体はズカズカとわたしの横を通り過ぎて行く。やがて最後の一人も通り過ぎ、わたしは安堵した。

「なんか緊張しちゃったよ~。海斗は大丈夫だった?」

 そう言って隣を見たわたしは、海斗がいないことに気づいた。

 来た道を振り返ってみるが、海斗の姿はどこにもなかった。さらには、つい先ほど通り過ぎたあの団体の姿もなくなっていた。

「海斗!海斗、どこなの!!」

 名前を呼んでみるが返事はない。

 しばらく辺りを捜し回ったが、海斗はどこにもいなかった。

 急いで家に帰ったわたしは両親に事情を説明。すぐに警察へ連絡することになった。その後、警察が必死になって捜したが、3日経っても海斗は見つからなかった。


 その一週間後である。海斗がひょっこり帰ってきたのは。

 両親や警察が海斗に、今までどこで何をしていたのかと訊ねると。

「もりでどうぶつさんたちとあそんでた!」

 と、答えた。

 また、こうも言った。

「ぼくが13さいになったら、またむかえにいくよってどうぶつさんたちがいってた!」

 と。


 あれから数年が経ち、海斗は13歳になった。しかし、彼を迎えに来る者はまだ現れていない。

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