自動小銃と機関銃

 昔から間違えられやすいのが自動小銃と機関銃である。

 歴史的に見ると、確かに、自動小銃の登場により、機関銃が不要だとも言われる事もあったが、基本的にこの二つは似ているが、用途の違う銃器である。

 歴史の上から言うと、機関銃は第一次世界大戦前に登場している。機関銃の前はガトリングガンと呼ばれる他銃身の連発銃である。

 鉄砲は元々、銃口から装薬と弾丸を詰めて、発射するという物である。この方法は長らく続く中で、人々は連発が可能な銃を考えるの道理であった。その為、多銃身を持つ銃が次々と生まれるが、それらは重量や利便性から、流行する事は無かった。

 初めて、連発が現実的になったのは回転式拳銃。薬室をシリンダー型にした事からである。それまで銃身と薬室はほぼ、同じ物であったが、薬室だけを別にした事から、先の多銃身に比べて、圧倒的に軽く、また、装填が楽になった。

 この後、弾薬と装薬を一緒にしたカートリッジ式弾丸が登場すると、こんどは先に述べたガトリングガンが登場する。これは束ねた銃身に回転させ、その薬室部分に弾丸を次々と装填、射撃を機械的に繰り返す機構を持った物であり、重量の問題はあったが、安定的に連発が可能な銃に仕上がった事になる。

 この後、ライフルリングの発想が生まれ、より強力な銃が開発される中で、歩兵銃は岐路に立たされる事になる。射程距離、威力を考えるとボルトアクションと呼ばれる方式でなければ、強力な弾丸は使えな。レバー式、回転式など、連発性に優れた方式では強力な弾丸を用いた時に破損や燃焼ガスの飛び散りなどが大きかったからだ。

 結果的にボルトアクションライフル銃が一般的になる中で、それでも強力な弾丸を連発させたいという発想は消える事が無く、開発が彼方此方で進んだ。

 結果として機械工業の発展の中で、機関銃が生まれた。

 歩兵銃が使う強力な弾丸を安定的に連発する事が可能な銃。

 それは夢のような銃であった事は間違いない。

 つまり、当初は歩兵銃の対極として機関銃は生まれた。

 それは戦場で圧倒的な火力を示し、連発に対しての有用性を再認識させた。

 ここから拳銃弾を用いる短機関銃などが生まれた。

 しかしながら、拳銃弾を連発しても射程距離、威力は歩兵銃の用いるライフル弾に大きく及ばず、戦場での圧倒的な火力には至らなかった。

 第一次世界大戦において、機関銃の持つ圧倒的な火力を手軽に運用する事が出来ないかと軽量化が求められた。結果として、1人で運ぶ事が可能になった機関銃を軽機関銃として投じられたが、当初は故障、トラブルが多かった。それでも簡便に運用が出来る軽機関銃は戦場において、多く求められた。

 これは第二次世界大戦までに達成される。機関銃は重機関銃と軽機関銃に分類され、重機関銃は戦車等の車両に搭載される他、据え置きに特化され、使用される弾丸もより強力な物へと変化した。軽機関銃は運搬を一人で可能とし、弾薬手と連携する事で運用が可能となった。結果、分隊支援火器として、運用される事が増え、歩兵部隊の火力を大幅に向上させた。

 第二次世界大戦中盤程から、更なる火力の向上が求められ、すでに分隊支援火器の一部として運用される短機関銃と歩兵銃の間となる突撃銃がドイツにて考案される。アメリカでは単純に歩兵銃の連発が考案され、尚且つ、突撃銃に近い発想ながら、威力の弱いライフル弾を用いた連発銃が考案され、それぞれ、M1ガーランドとM1カービンとして採用される。

 現在の自動小銃に近い発想はドイツの突撃銃であり、この発想から開発されたStg44は後にソ連が開発したAKシリーズに大きな影響を与える。

 Stg44は反動の低いライフル弾を用いる事で安定した連射性能を有し、火力の向上を見せた。しかしながら、コストは高く、ドイツ軍は多く配備する事は叶わなかった。

 戦後、多くの国では自動小銃の採用が始まり、M1ガーランドのような従来の歩兵銃が用いる大口径ライフル弾を用いた物が多く開発された。しかしながら、それらは反動の強さから、思ったような連発は難しい事から、小口径のライフル弾が開発され、それに見合った自動小銃が開発されるに至った。

 この時点においても自動小銃と機関銃は別物であった。

 根本的な違いは長時間の連射が可能かどうかという点であった。

 自動小銃の多くは軽量化などが考慮され、その耐久性は長時間射撃には不向きである。自動小銃における連続射撃は用いられる弾倉ならば5本から10本程度。これは一人の兵士が携帯する弾倉を想定する。

 機関銃は主に弾帯を用いる場合なども含めて、数百発から数千発の連続射撃を可能にしている。その結果として、重量は増えているが、最近の軽機関銃の多くは弾薬手などを用いず、1人で運用が可能な事から、自動小銃と軽機関銃の垣根が曖昧となりつつもある。自動小銃の一部には銃身等を交換する事により軽機関銃に替えることも出来る。

 一昔前では兵站の事を想定して、自動小銃と軽機関銃を同じ弾薬に揃える事が流行ったが、昨今では軽機関銃に車両への攻撃力などを求める事から、再び大口径ライフル弾を用いる流れがあり、運用方法は変化しつつある。

 

 以上の点から自動小銃と軽機関銃とは別物であるが昨今の創作物の中には同じ物であったり、同じ弾薬を用いるにも関わらず、軽機関銃の方が威力が大きかったするが、これは適切では無く、基本的に同等の弾薬を用いるならば、威力自体は同じであり、長時間の連続射撃が可能な事が軽機関銃の特徴である。すなわち、軽機関銃が特別に強力な火器では無く、一定の条件下において、有効な武器である事を想定して、作品に登場させるべきだと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る