060 天の恵みで食べ物降らせてるわけじゃないのよ

 今年は暖冬だったせいか、あまり雪かきをしなくてすみました。雪だるまを作って遊んだのは、小学生が最後だったかもしれません。日本では二段が一般的ながら、海外では三段あります。スノーマンを見るとわかりますよ。

 はじめのうちは元気があって、大きいだるまを作るぞと意気込んでいるのですが、転がしても転がしても大きくならない。1メートルくらいはある、しっかりした雪だるまを作ろうと思うと、結構な雪の分量が必要なのです。そのうちに手がかじかんで、痛いとしか感じなくなる。毎回そこでギブアップして、家の中へ入ってしまいました。足の方も、すっかり指がしもやけになっている。ストーブの前に陣取って、手足を温めているうちに、雪だるまを作ろうという気持ちまで溶かされてしまうのです。やー、上手いこと言ったね、これは。

 子供のころ、庭に降った雪を食べてみたことがあります。味もへったくれもないので、砕氷だなーくらいの感想しか持ちませんでした。その後、かき氷シロップをかけて食べたい、というようなセリフを何かで見かけて、感心しました。そんな素敵なことを思いつく人がいるのかって。見た目にもきれいですし。

 だけど、わたしは実行しませんでした。ひとつは冬までかき氷シロップが冷蔵庫に残っていなかったから。そしてこちらの方が大きい理由なのですが、寒いのにかき氷を食べたいと思わなかったから。シロップをかけて雪を食べるなんて、ビジュアル的にも、味的にもナイスアイデアですよ。氷をかく手間を省けるし、好きなだけ食べられる。でも、夏でもないのにそんなにたくさんかき氷欲しい? いらなくない? ちょびっとだけ食べるったって、ねぇ。

 後から知った知識として、雪って雲の中の水蒸気が冷やされて凍り、浮いていられなくなるから地面まで落ちてくるわけです。核となっている部分は、大気中のチリやホコリです。見た目は白くてきれいとはいえ、よくよく考えてみてください。雪って食べ物じゃないでしょ。そうなのよ、天の恵みで食べ物降らせてるわけじゃないのよ。

 それとはまったく別の方向として、路肩に積もった雪って、排気ガスやら泥ハネなんかで焦げ茶色に汚れるでしょ? 学校からの帰り道で、雪がまだ残っていると、足で踏んだり蹴ったりして道中遊びますわな。なんとなく、それを思い出しちゃう。雪って、そんなきれいなもんでもないんじゃないかと、子供心に頭をよぎったんですね。景色や降っている最中は美しいとしても。

 大人になるって、こういうことなんでしょうか。

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