058 感想とニュース

 アニメでも映画でも小説でもいいのですけれど、何かひとつ作品を見終わると、他の人の感想へ興味がわくものです。しかし結局、その手のもので面白いのはしっかりとなされた考察か、反対に一言コメントだったりします。瞬発力か、じっくり掘り下げるか。中間はどれもライトなものにならざるを得ません。

 このエッセイについては、ライトで気軽に読める、というのが狙いのひとつですが、思考へのとっかかりになればいいな、と思っています。

 さて、単発であれば切れ味が求められる。キャッチコピーは意図的に鋭さを生み出していますけれど、その陰には何百というボツが潜んでいます。瞬発力でいいコメントをするのは、狙ってできることじゃありません。まぐれで何回か続いても、必ず運が底をつく。維持するためには、努力が求められます。

 感想はどこまでいっても副次的な産物で、常に作品の背中を追いかけることになります。これはニュースも同じ。世界でどんなことが起こったか、終わった後に知ることになります。報道としてまとめるには時間が必要で、そこにどうやってもタイムラグが生じるからです。

 ニュースは事実を伝えてくれればいい、と考えているものの、、の選択がどうしても入ります。物事は平面ではなく立体であって、見る面が違えば出る目も変わる。殺人事件で加害者の事情から迫るか、被害者の事情から迫るか、事実を追うといっても真逆の印象になります。複合的に理解を求められる一方で、いちいち細部を検証していては身が持たないので、どうしても雑な理解になってしまう。受け手は紹介者の視点を仲介して、過去の出来事を知ることになる。自分で見聞きする以外、伝聞から抜け出せないわけです。

 また作品の感想ということであれば、批評でもいいのですが、リアクションになります。真にクリエイティブなのはアクションの方であって、楽しませてもらう側に立っていては、いつまでたっても先頭に立てない。新しい景色は、先頭に立たなければ見られないのです。

 ニュースとして取り上げられるような出来事は、リアルタイムで体験するのがベストです。そして作品は事件となり得ます。それだけ多くの人の心を動かす力を持っている。意識や見方を変えてしまうような、架空の事件がある。

 あるいは、ウェブサービスだってひとつの作品です。そして革新的なものは、とてもプライベートな動機から発信されるものでしょう。

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