第5話 不良 小室晴人2




晴人は近くの木製の三人掛けの椅子に腰をかける。会いたくない人ナンバーワンの双葉がこのショッピングモールに今日も来ていて、そして晴人がこれからが本番であるゲームセンターに入って行った。さらに悪いことに他の女子も一緒に。同じ制服だから学校の人なのだろう。


数分待ったが出て来そうにない。飲み物も無くなったので諦めて中に入る。

見つかる可能性は低いだろう。なぜなら彼女たちはプリクラやUFOキャッチャーくらいしかしないだろうから。

このゲームセンターは三つの出入口があり、店を正面にして右からプリクラやカード系、中央にUFOキャッチャーやスイートランド系、左にリズムゲームやカーレースなどのアクション系となっている。

左の出入口から入るが見た感じいそうにない。ふっと胸を撫で下ろす。そのまま歩いて行き、目的の先程までやっていたゲームのところに行く。しかしそこには一組先にいてゲームを始めていた。


待つこと五分。その人たちはゲームオーバーでゲームを終えた。

「こんなクソゲー二度とやるか」

一人が乱暴に銃を置き、晴人を見ることなく去って行った。

(ああいうことを言うなら最初からしなければいいのに)

晴人は心の中で悪態をつく。だがすぐに退いてくれたと考えて百円を投入する。もう一回となるよりは百倍ましだ。

ゲームが起動し、モード選択画面が表れる。ゲームセンターのゲームには隠れモードがある。某太鼓ゲームに鬼というモードがあるように。

HARDを選択した状態でレバーを右に素早く二回動かす。すると隠れていたモード『すーぱーうるとらはいぱーはーど』という製作者が書きたかっただけのモード表れる。

その状態で銃の引き金を引くとゲームスタートである。


モードの違いで面が変わることはない。但し、一面では敵の数が倍になり、プレイヤーを発見する能力が大きくなる。二面では敵の耐久値は上がるが自分の耐久値は下がる。さらには近付く速度も速くなる。三面では耐久値が増し、攻撃の回数も増し、速度も増す。逆にクリティカルヒットになる回数と時間が減る。

一面、二面は先程より時間はかかったがすんなりクリアできた。三面に入る前の映像のときに深呼吸すると周りに人だかりができているのに気が付いた。そこには前やっていた二人組もいた。

三面が始まろうとしたとき周りの人は息を呑み、晴人のプレイを一心に見ようという凝視する。

それと同時に晴人はゲームに集中する。雰囲気が変わるほどに。


晴人は無事というか当たり前にクリアした。しかし三面だけに十分近くかけていた。

クリアの文字が表れると周りの人は歓声を上げ、割れんばかりの拍手をする。

その中を晴人はぐったりしたようにその場を離れた。そこには先程の覇気は無くなっていた。

ベンチに勢いよく座る。集中力が切れると体が重くだるくなる。目を閉じ、全身を脱力させる。

そのとき聞き覚えのある、否聞き間違えるはずのない声が晴人に投げかけられた。

「凄いですね、晴人君。こんな才能があったとは」

「あーん、双葉ちゃんに名前を憶えて頂いていたとは光栄です。まあ、ゲームセンターは不良の住処みたいなところですから」

目を開けるとそこには双葉だけではなく、双葉と同じ学校の女子が三人立っていた。その三人は晴人に嫌疑な眼差しを向けていた。

「こんなところで何しているの?」

「この四人で遊んでたの。そうだ、晴人君一人なら私たちと一緒に遊ばない?ねぇ、いいでしょ?」

双葉は後ろに立つ三人にも尋ねる。

「まさか双葉ちゃんに逆ナンされるとは」

すると双葉の顔は真っ赤になった。自分の言った言葉を思い出して恥ずかしくなっているのだろう。

「けど、ごめんね。とても嬉しいんだけど、そろそろ帰ろうと思ってたんだ」

晴人はじゃあねと言い、逃げるようにその場から離れた。


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