『4点!』『だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-』 著者/ベネ・水代
書評レベル『辛口』
タイトル
『だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-』 著者/ベネ・水代
キャッチコピー
『わたしは、ここにいます――古くさくて優しい、剣と魔法のファンタジー。』
あらすじ
『冒険初心者の四人組が請けた依頼は、ダンジョン上層のキノコ刈り。準備に戦闘に大わらわしつつ、どうにか収集を終え地上に戻ろうとする彼らの前で、次々と異変が起こる。四人を狙う悪意の正体とは・・・? 』
ジャンル
ファンタジー
タグ
ダンジョン、迷宮、冒険、シリアス、感動、バトル、剣、魔法
総文字数
108,854文字
公開日
2016年3月1日 22:17
最終更新日
2016年3月8日 08:25
────2016年3月26日15:52現在時点。
文章力★★☆(★×2)読みやすさ
独創性★☆☆(★×1)オリジナリティ
娯楽性★☆☆(★×1)おもしろさ
────合計☆数『4点!』
実は私、ダンジョンものが好物でございまする。だからこそいえることがひとつ。ずいぶんとまあ、ご丁寧な物語だ。
物語は三人称形式の戦闘から始まります。灰色の魔物に対する少年のいち場面を切り取り、『止まり木亭』という冒険者の酒場へ場面が移る。ルピニアというエルフの少女の心情から酒場の雰囲気を感じ取り、目的であるダンジョンを攻略する仲間が集い始めるのだが、最初の一歩からつまずいてしまう。彼女らは最初の依頼を、クエストを、ダンジョンを舐めきっていたからだ。
「いいこと? このお金をあなたたちに貸してあげる。これでそのナメきった装備をどうにかしてきなさい。クエストを達成できたら、残りの金額は報酬としてあなたたちのもの。ただし」
アルディラは──酒場の女将──両手を腰に当て、三人を睨みつけた。
「あくまでも、そのお金は貸すのよ。クエストに失敗したら即座に借金になる。……さあ、分かったらさっさとバッタモンド商会へ行ってきなさい!」
始めての準備、始めての連携、始めてだらけの冒険初心者が成長していく物語。
あまり辛口になるつもりはないのですが、ダンジョンものが好物なので丁寧に描かれていればいるほど「知ってるわ!」となる私がいたりする。改めて思う。ダンジョンものは難しいですね、書くの。
今作品は旧きよき古典のダンジョン小説です。それもあって展開が読める。ほぼほぼその通りに進んでいくため、『妖精狩り』が出てきても、ほむりと頷くだけにとどまりました。前回の畳屋さんの書評で似たようなことを言いましたが、文章力はあっても動く場面が少ないのが原因ですね。ここでいう動くは読者の予想を良い意味で裏切る展開のことです。読者の感情が動かないわけですね。
古典の良さを再発見させてくれる作品。そして思います。ベネさん。背筋、伸ばしてくださいね。読後の私の呟き。
────そうだ、古典を読もう。
今作品の良さではなく、古典の良さを再発見させてはダメですよ。主張するのは今作品の良さですからね。古典を普及させたいのなら正解ですけど……いろいろと調べてみた結果、とても精力的に動いているじゃないですか。小説家になろう、ブログ、販売会などなど。そこで私は気づきました。そうか、発想の根本が違う。
今作品の最初、起点とも呼ぶべきものが『イラスト』である。奇抜な設定や面白い人物などではなく、キャラ絵とも呼ぶべきものから小説が展開されています。元々がイラストありきの小説なので、人物描写が抑え目なのですね。どこかステレオタイプ、オリジナリティに欠ける性格をしているのは、イラストから想像させた人物たちであったからでしょう。勿体ない。
物書きは文章表現で描くという前提が違っているので、表現の仕方に違和感があったのです。今作品はイラストが添えられていてこそ、今作品の良さを提示できるような気がします。古典の掘り起こしはオマージュやリスペクトと呼ばれ、どこでオリジナリティを出すか、作者は苦心します。そこがイラストありきになっているので、小説単体で読むと面白さが伝わらない。作者個人のオリジナリティはどこへ?
シリーズものの第一巻のようですから、外伝と位置づけて、もっともっと冒険している巻を第一巻にしてはどうでしょうか。すでに四人が四人組となっており、面白さが伝わっていれば最初の出会いが気になるでしょう。そこでそっと出すのです。ありますよ、外伝。お代はこちで、と。
いやあ。本格的なダンジョンものを久しぶりに読みましたね。古典ファンタジーともいえますけど、ファンタジーですなあ。多読であり乱読家の私みたいな読者ではなく、ダンジョンものを知らない読者なら評価はがらっと変わるでしょうね。丁寧に描いていますから、とても取っ付きやすい。冒険者のセオリー、装備のいろは、ダンジョン内での陣形、地図の重要性や休憩の取り方、消耗する体力と道具といったものを知らない方々なら、今作品がオススメですね。そういう対象が読者になると思います。マニア向けはしません。私、マニアでした。
タッグを組める相方がいるのなら、挿絵をふんだんに活用してみては? かなりうらやましす。最後にひと言『ダンジョン……だんじょん?』ありがとうございます。
八艘跳。(´ω`)
とうとう『毒吐エッセイ』が自作のPVを抜きました。☆が越えるのはいつの日になるだろうか。応募者の方々のPVも増えていれば幸いです。次回の書評を呟いたら追記しますね。それではまた次回の書評で会いましょう。ではでは。
次回の書評。
『ひだまりファンタジア』 著者/米田助六
Twitter 2016年03月26日18:28 呟く。
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