『7点!』『海神楽 ─蒼眸の退魔巫女─(完結済・コンテスト応募中)』著者/壱原優一

書評レベル『辛口』


タイトル

『海神楽 ─蒼眸の退魔巫女─(完結済・コンテスト応募中)』著者/壱原優一


キャッチコピー

『玉手箱を巡って二人の男が、そして姉妹が争う愛憎渦巻く退魔師妖怪活劇』


あらすじ

『ある夜を境に平和な退魔神社は戦場に変わった。海底から妖怪群が攻めて来たのだ。毎夜の戦いで倒れていく退魔師たち。遂には経験の浅い双子姉妹だけが残される。そこへ傭兵として漕島清輝がやって来て、逆進攻を提案する。賛否両論あったが最後には、海の底にある妖怪の棲家“龍宮城”へ攻め入ることを決める。

そして三人は、甲羅を背負った侍に出遭い、事態は急変していく。


2016/03/05 完結。

総文字数 約104000。

第8回GA文庫大賞前期 二次選考落選作を加筆修正。


※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。』


ジャンル

現代アクション

セルフレイティング

残酷描写有り 暴力描写有り

タグ

あやかし、退魔師、妖怪、現代アクション、巫女、シリアス、バトル、完結

総文字数

104,466文字

公開日

2016年2月21日 16:22

最終更新日

2016年3月24日 00:56


────2016年3月25日10:03現在時点。


文章力★★★(★×3)読みやすさ

独創性★★☆(★×2)オリジナリティ

娯楽性★★☆(★×2)おもしろさ


────合計☆数『7点!』


 謳い文句にもある『GA文庫大賞前期 を加筆修正』に納得した。させられた。これを読んだ編集者は私と同じ気持ちになっていたら嬉しいね。


「実に面白い。だが、売れんな」


 才能のなかった退魔師の彼、お互いに意識しあう双子姉妹、愛憎渦巻く敵側といった話を綺麗にまとめている。読書中に呟いたけど、『東京レイブンズ』を思い出した作品でしたね。いやあ、面白かったんですよ。本当に。


 物語は三人称多元視点。仄暗き井戸の底から襲いかかる妖怪たちから始まります。敵勢力は『龍宮城』であり、退魔の社に迫る脅威を取り払うことが物語の着地だと、オープニングで語っています。第一話で主役である彼『漕島清輝そうじまきよてる』が登場し、設定や状況が会話形式で示され、着々と退魔の杜を舞台にする準備が整っていくわけです。そうして到着した舞台で姉妹と出会い────。


 本当に面白い。公募の小説なのに、適度な空行が入り、Web小説としても読みやすくなるように工夫されています。適度な語彙にルビをふっていますし、戦闘は映えるうえに情景描写にも気を配っている。一冊の書籍を読んだ。そういう読後感になりました。読み終わったあと「うむ。面白かった」となったわけです。


 ここからちょいと辛口。壱原さん。背筋伸ばしてえ。


 これは売れません。この作品の売りがないのです。先も取り上げた『東京レイブンズ』が比較対象になりやすいと思います。こっちはシリーズ化にくわえ、アニメ化までされていますからね。同じ『現代和風ファンタジー』ですから、読まれていなければ一読をオススメします。簡単に『東京レイブンズ』を紹介しますと────。


『かつて。稀代の陰陽師、土御門夜光つちみかどやこうが執り行った禁呪「泰山府君祭たいざんふくんさい」は失敗した。それ以降、東京に「」と呼ばれる災害が起こるようになり──。

 時は流れ現代。陰陽師の名門、にあたる土御門春虎つちみかどはるとらは幼馴染でもあるの土御門夏目なつめと再開する。その直後に国家一級陰陽師・大連寺鈴鹿だいれんじすずかの起こした事件に巻き込まれ────。

 春虎と夏目は事件を通して絆を再確認して育みながら、霊的災害・通称「霊災」に立ち向かっていく「学園、陰×陽ファンタジー」です!』


 売れる要素を抜き出しつつ、説明してみた。ステマではない。ダイレクトだ。一冊で綺麗に着地することが公募に望まれていることは知っていますし、エピローグにあたる『翠瑠浜の姉巫女』で今後の物語を想像させる余地もある。だがしかし、この作品の売りはなんだろう? となったのですよ。


 小綺麗にまとまっていて崩しがない。そんな作品でした。加賀山さんの書評でも書きましたがのです。売れるキャッチコピーが出てこない。逆になら、評価が抜群にあがるのではないでしょうか。小説単体として考えると『』がない。つまり『』がない。そういう考えに至りました。最終選考に残れなかったのはだと思います。


 いつもより辛口? バカいうな。壱原さんはさえ身につければプロだ。すぐに書籍化されて先生になる実力をお持ちの方だ。評価項目に『構成力』があれば『★×3』だっただろうね。連載中が多いWeb小説だから削った項目なのだよ。角川さんみてますか。プロの卵がおりますよ。


 私よりも実力があるお方なので全力で媚びていきたいところですけど、お手直しをひとつ。『嵐の前(2)』と『五月の嵐(1)』の間に、日常場面をいれてほしかったです。場面展開で削ったであろう箇所ですけど、『伴次ばんじ』さんと『和泉』さん。唐突に出てきた印象で、行方不明になりそうなほどに混乱した私がいました。漕島と顔合わせをする一場面をいれるだけで解決するので、加筆することを願います。ただし、私個人の意見なのであしからず。


 いやあ、埋もれた名作ってこれだね。企画の趣旨に沿った作品が出てきたよ。私は驚いたね。本当に。今後は先生と呼ぶ日がくるのでしょう。壱原さんが書き続け、書籍になる日を楽しみに待ちたいと思います。


八艘跳。(´ω`)


 次回の書評はご飯を食べてから呟きます。呟いたら追記しますので! さあてと。何を食べよう? 冷凍のパスタ? チャーハン? 豚汁と漬物なんていいんじゃないかな? なんでそのメニューかって? 読んだらわかるよぅ。


次回の書評。

『やがて色付く異世界幻想』 著者/畳屋嘉祥

Twitter 2016年03月25日14:05 呟く。

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