カクヨム作品の書評。

『6点!』『有限世界と耐性少女―encroachment―』 著者/加賀山かがり

書評レベル『辛口』


タイトル

『有限世界と耐性少女―encroachment―』 著者/加賀山かがり


キャッチコピー

『ドキドキ、崩壊世界の侵蝕譚―赤毛の少女エイリは今日も征く!―』


あらすじ

『魔法? ファンタジー小説にそんなものありませんよ。

 泥塗れのド直球ドシリアスのハーフボイルドファンタジー!


 文明が一度崩壊した世界で、人類は壁を築いて生存圏を確保した。自分たちがもう一度外の世界での自由を手に入れるために。

 赤い髪に深緑色の瞳、褐色肌のスレンダー少女エイリはそんな生存圏の街に所属する学生で、また街の統括直属の調査員でもある。

 エイリは未だ何も知らず、壁の外を調査したり、街の中を駆けまわったり、忙しい日々を送るばかりだった。

 だけれどそんな折、街に対して叛乱を企てる組織の粛清を任されてから、エイリの世界は激変する。

 街の秘密、世界の秘密、自分たち新世代の秘密、そして文明崩壊の秘密。

 大人たちは正しさなんて教えてくれない、だけれど今日も空は遠く青くて澄んでいる。

 少女は誓う、為すべきことを為すのだと。


 テンプレファンタジーには飽き飽きだ、転生モノより現地人主人公ものが読みたいよ、そんなあなたにお勧めのドギツイファンタジーがここにあります。

 ストレスフリーならぬストレスフルな物語、試しに読んでみませんか?』


ジャンル/ファンタジー

タグ/ライトノベル、女主人公、遠未来、コンテスト応募中、ファンタジー、カクヨムオンリー、ハードボイルド、非テンプレ


総文字数

89,553文字

公開日

2016年2月24日 20:49

最終更新日

2016年3月22日 20:04


────2016年3月23日14:56現在時点。


文章力★★☆(★×2)読みやすさ

独創性★★☆(★×2)オリジナリティ

娯楽性★★☆(★×2)おもしろさ


────合計☆数『6点!』


 まずは一発目の書評になりますので、私と関係の深いというか、そもそもこの企画を立ち上げる経緯がTwitter上でのやり取りの最中に悪ノリで始めましたからね。その呟き、70近いレスのやり取りをした(バカ?)相手が加賀山さんです。元々Twitterで創作論談義をする間柄ですね。相互はしない派閥でしたが、互いの作品を自然と批評したうえで、レビューしあっていますから相互になっています。決して、相互の依頼ではないので眼を瞑っていただけると助かります。


 さてと。まずはタグにやられました。ハードボイルド。女主人公。まったく意味がわからない。私のなかでハードボイルドといえば、レイモンド・チャンドラー。かの作家を知らなくてもこのセリフは知っているはずです。


『タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない』

 ────『プレイバック』(早川書房、1959年10月)第25章より引用。


 ハードボイルドといえば、フィリップ・マーロウ。無骨で男臭い私立探偵の印象の私に飛び込んできたタグ。

『男じゃないハードボイルドとはなんだ? なんなんだ?』

 あらすじやタイトルを無視してタグのフックにかかりました。そういう読み方をする人もいると覚えて帰ってください。タグの見直し、必須です。人気タグばかりに寄せるのも正解ですが、ひとつふたつは、作品の内容を表すタグを仕掛けてください。私みたいなのが引っかかります。


 物語は『1-0 introduction.』いわゆるオープニングから始まり、少女、エイリを主役とした三人称形式、戦闘描写から本編が語られていきます。作者の意図した文体が、ここで理解できるのです。渇いた文章。タフな主人公。彼女は過去に覚悟を決めた描写がはいり、すでに手をめています。日常を描く場面でさえ、青春を謳歌する友人たちとのズレを体感しつつも、彼女は役割を果たしていきます。そんな最中で、ひとりの友人を────。


 この辺りで内容は切っておきましょう。気になる方は、ぜひご覧ください。本当にストレスフル。WEB小説は重たい展開を嫌う傾向があり、WEB小説が売れ始めている昨今、ベテラン作家以外の重たいストーリーは避けられてしまいます。そんなうえで挑戦している姿勢は買いたい。なのに、評価が標準なのは伸び代があるはず、期待値ともいいますけどね。


 本当にハードボイルドであり、ハードボイルドの弱点が露骨に出ている作品でもあります。すなわち、『萌え』がないっ! 華はあります。萌えがないのです。これはライトノベルでは減点です。『ストレイト・ジャケット』でさえ、幼女が出るのに! というのは、半ば冗談、半ば本気は置いておいて。いわゆる萌えポイント。キャラクターの弱さ、意外性を魅せる場面があれば、それも覆ると思います。萌えポイントは人それぞれですからねえ。少なくとも、私の萌えポイントはなかったっ。いや、エイリは好きだけども。


 戦闘描写は畳み掛けるように運んでいく冷徹な印象。燃える展開や青春の一ページもある、極めて全うな成長と困難を描くライトノベル。世界の敵に対する主人公の方針が今だ不明ですが、それさえも一気読みという『完結チャンス』がありますからね。これから伸びる可能性もあるというわけです。私の萌えポイントはなかったがなっ!


 時間をとって、重たい世界、女主人公を読みたいあなたは読むべきか。実は私。女主人公……苦手なんですよね。


八艘跳。(´ω`)


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