この素晴らしい世界に終焉を!

風流

プロローグ

目が覚めるとそこは知らない場所だった。俺は仰向けの状態らしいが、うまく体が動かない。

第一印象は「あれ、俺、外なんかで寝てたっけ。つか、都会でこんなに星が綺麗に見れるんだなぁ」だった。

虹色の星々が輝く薄暗い空間。明らかに俺がいた場所ではない。どこだ、ここは。プラネタリウムですか、ここは。

一人で自分が置かれた状況を考えていると、声が謎空間に響いた。女の声だ。そう認識すると自然と体が動くようになった。

起き上がり、声の主を探すと、少し離れたところにソレはいた。

透き通った水色の髪に、まるで造られたかのような完璧なプロポーションをもった美少女が、絢爛な椅子に座り、俺のことを見ていた。

「平田オサムさん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先程、不幸にも無くなりました。あなたの生は終わってしまったのです」

「は?」

何を言っているのだ、この女は。何かのドッキリか?どうせなら、もっとリアリティーのあるドッキリを仕掛けろ。

「信じられないって顔ね。無理もないわ、ここに来る前のあなたの体はバラバラのグチャグチャだったんだもの、記憶の一つや二つ飛んでいてもしょうがないわ」

バラバラのグチャグチャって……

「そう、バラバラのグチャグチャ。もう脳みそなんてでろんでろん。目玉は飛び出してて、医者は何とか形だけでも元に戻そうと躍起になってたわ」

嘘だろ……つか、俺は電車にでも刎ねられたのか?

「うーん、あんまり聞かないほうがいいんじゃない?多分、聞いたらあんた死にたくなるだろうから」

そんなことよりも、あ……ごめんなさい、もう死んでるんだった!と口元をヒクつかせている女を殴りたくなった。

と言うより、この顔だけは良い女はどこの誰なのか?俺は自分の死因よりもそっちの方が気になり始めていた。(ただの現実逃避かもしれないが)

「顔だけってどういう意味よ!?」

そのままの意味だ。

「ふん、いいわ。私はアクア!ここ日本担当の女神アクアよ!!」

無駄に可愛いドヤ顔が癪に障るが、とりあえず自称女神の痛い女ということだけはわかった。

「ちょっと、何で信じてくれないのよ!!」

信じる方がどうかしてる。証拠でも見せてくれたら信じてもいいけど、どうせそんなの無いだろう?

「……ここまで疑り深い人間は久しぶりだわ。まぁ、死ぬ直前の記憶も無くしてるし、仕様が無いか」

いいわ、と女は手を上に掲げた。すると、何ということだろう。手の周りが輝き始めた。

手にライトでも仕込んでるのか?

「違うわよ。あんた、今から天国に行って永遠に縁側でお茶を啜るのと異世界に行って魔王を討伐するのどっちがいい?魔王を倒したらどんな願いでも叶えてあげるけど」

は?異世界?魔王?

「そう、魔王。向こうじゃ、魔王がブイブイもの言わせてるせいで人間がバンバン死んじゃって……そんなご時世だから誰も転生しようとしないの。で、神様会議で異世界から代わりにどんどん送り込んで魔王倒してもらえばいいんじゃね?ってことになったのよ」

いや、そんな簡単に言うなよ。絶対にすぐ殺されるだろ。日本の若者なめんな。無関心、無干渉の申し子達だぞ。

「だから、特別に神器を持たせて送り込んであげるの!」

じんき?

「簡単に言うとチートね。絶対に壊れない防具だとか、何でもぶった斬る剣とか……まぁ、この二つは今は出てるけど」

ほーん、んで魔王倒したらどんな願いでも叶えてくれると?

「ええ!」

元の世界で好きなように人生やり直すことも?

「ええ!!」

例えば、超絶イケメン頭脳明晰金持ち、さらに美人な彼女とかも好きなようにできるわけ?

「ええ!!!」

オーケー!魔王討伐はこの俺に任せてくれ!

「ちょっと動機が不純な気がしなくはないけど、いいわ。それで--」

どんなチートにする?と女の手を見てみるといつの間にか輝きは収まっていて、一本の鍵が握られていた。

なにそれ?

「鍵に決まってるじゃない」

いや、何の鍵?

「ん、この向こうから好きなものを選んで頂戴!」

パチンと指を鳴らすと目の前の空間が歪み始める。ガチガチと何かが噛み合わさる音が断続的に響く。

すげぇ。本当に女神だったんだ。俺はそこに現れたモノを見て呆然とする。

そんな俺の反応を見て女神はドヤ顔でふんぞり返っている。


音が止んだそこには神々しく黄金に輝く扉があった。


そして、俺は某RPGをプレイする前に感じたあの懐かしい高揚を感じつつ、女神から受け取った鍵で扉を開けたのだった。


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この素晴らしい世界に終焉を! 風流 @gohead00

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