○〈卵王子〉カイルロッドの苦難(冴木忍)

 城中の人間が知っている王子の秘密。『卵で生まれてきた王子』。その事がショックで母は彼を産んですぐ死んでしまったのだと。

そうして生まれてきた王子は、溺愛する王、厳しい教育係・ダヤン・イフェに見守られながら心根正しく成長した。盆栽が趣味、という変な子にはなったが。

 ある日町を異変が襲う。カイルロッドを除いて町中の人間が石になっている!辛うじて話せる状態だったダヤンから旅立つよう言われ、一人旅に出るカイルロッド。その先に待つ苦難とは。


 全九巻。全巻で泣いた。冴木先生の作品はもうすごい。好きって言う言葉を使うのも憚られるくらい好き。中でもこの作品は、強い影響を受けたなぁ。

 私の中には幾つか法則があって、その一つが「おっさんが良い作品は良作」というものである。

 物語というと、十代がメインであるが、それだけの構成になってしまうとどうしても青臭い物になってしまう。若さに任せてぶつかってみたり、傷ついたり。もちろんそれで良いと思うんだが、やはり深みには繋がりにくい。そうだといって、十代にして深みのあるキャラクターでは、あまりに現実味がない。格好良いけどさ。○ラムダンクの赤○先輩とか、18才って感じしないぜ。好きだけどね。


 教え導く、なんていうとうるさい話になってしまうが、何となく考え方を説くには、やはりおっさんのようなキャラクターでないと説得力が足りない。しかしそのおっさんを描くには、自分自身が磨かれてなければならない。うむむ。人間修行。


 この作品におけるおっさん、イルダーナフは最高のおっさん像である。格好良い。かっこつけではなく、生き様も含めて格好良い。

 


 また時間見つけて読み返したいなぁ。

 冴木先生のは他に、「星の大地」「風の歌、星の道」「道士リジィオ」「メルヴィ&カシム」「天海飛行船ルゲイラング」「天高く雲は流れ」(途中まで)とか、いっぱい読んだ。いい時代だった。中身大分忘れてそう。しくしく。

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