盗賊の一存

雨水かいと

生誕と時の流れ

 貧しい家に生まれた。


 3人兄弟だった。俺は末っ子だった。


 親父とお袋がいて、じっちゃんも生きてた。


 1番上の兄貴は徴兵された先で過労死した。

「キツい…もう嫌だ」


 2番目の兄貴は身分違いの恋人と心中した。

「こんな世界のどこが楽しいっていうんだ!」


 死んだ恋人側の人間が俺の両親を殺害した。

「お前らのせいで!お前らのせいでお嬢様は!」


 俺は6歳でじっちゃんと2人暮らしをすることとなった。

「怖かったろう?もう安心じゃよ」


 自給自足でも食っていけなかった。

「ワシの分もお食べ…美味しいかい?」


 生活が困窮していく。苦しい。辛い。


 10歳になり、耐えかねて露店で販売されていたリンゴを2つ盗んだ。1つはじっちゃん分だった。

「待てやクソガキ!」


 でも店の者に捕まり、ボッコボコにされた。抵抗したら、警察にも連行されて、血が上っていた俺が警察官をぶん殴ったら…牢屋にもぶち込まれた。

「貧乏人が街を穢すんじゃねえ!」


 1ヶ月も監禁された。その間に俺より悪い奴らと交友を深めた。盗賊や殺人鬼、強姦魔とかもいた。彼らは常に充実していたらしい。俺とは違った。何をやっても苦しく、辛かった俺とは明らかに違った。

「ありゃ快感だぜ?最高な気分さ」


 牢屋から出ると急いでじっちゃんのいる家に帰った。あの日から1度もじっちゃんには会ってなかった。


 俺の家でもある掘っ立て小屋に帰るとやけに騒々しかった。じっちゃんには騒げる友もいなかったはずなのに。


 慌てて家に飛び込んだ。そこにじっちゃんの姿はなく、酒と血と汗の臭いが染み込んだ盗賊の巣窟になっていた。じっちゃんのことを尋ねると…彼らが殺したという。遺体は近くを流れる川に捨てたらしい。

「お前も俺らと楽しくやろうってか?」


 その時、何かが俺を解き放った。


 俺はその場で盗賊団に入団したいと偽り、じっちゃんを見捨てて盗賊になった。

「ああ、よろしく頼む」



 これは俺が盗賊として生きようとした…若気の至りな話である。

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