夢春

都市伝説


皆さんはこんな都市伝説知っているだろうか?


マンションやホテル人が密集しているところに突然現れる「殺人鬼」


一夜にして確実にそこに住む人間を殺しつくすことから通称「一夜死神」


出没する場所は日本のみ殺人現場常に猟奇的なものばかり。


警察は凶器すらわからない神出鬼没突然現れ人を殺す。


逃げようのない恐怖。


その恐怖から過去唯一生き残った兄妹。


それが僕たちだ。





「へえ・・・連続殺人鬼に狙われた兄妹を描くホラーか・・・」


西阿理大学教授戸村蒼井が頷いた。


「はい・・・題名はまだ未定で一応試作品作品Aってやってるんです」


桐谷弔は付け加えて


「それにあらすじもこの物語は一部実話を元に構成されています。しか書いていませんし・・・」と言った。



戸村はあらすじのあるところに視点を当てた。


「へえ・・・これは一部実話なのかい?」


戸村は不思議そうに聞いた。

弔は少し言いにくそうに


「はい・・・2年前のあの事故を元に構成されてます・・・僕は・・・あの事件か

ら生き残った二人の中の一人で・・・」


弔の顔が曇った。

それを察したのか戸村は


「そうか・・・」とつぶやいた。


その後戸村は笑って


「コーヒーを入れてくるよ」


と奥の方に消えた。


桐谷弔は大学の寮に住んでいた。

大学の小説を書くサークルに入って早一年これから大学2年生になる。

さっき2年前といったが正確には3年前だ。


もう二度と思い出したくない記憶だが今でもたまに夢に出てくる。

弔は両親を連続殺人鬼に殺された。

死体など悍ましすぎて見る気にもなれなかった。

弔にとってそれは痛み以外の何物でもなかった。

だが悪いところばかりではない。


今回はその事件があったからこそこの物語を書くことができてると思っているからである。


だがそれはある種の逃げだった。

殺人鬼と言う計り知れない恐怖からの。


だが、そんな事はおくびにも出さず弔は戸村教授が入れてくれるコーヒーを待った。

やがて奥に消えた戸村教授がコーヒーを二杯持って戻ってきた。

弔は「ありがとうございます」と言ってコーヒーのカップを口に運んだ。

コーヒを飲みきったと同時にインターホンが鳴った。

弔はさっきコーヒーを持ってきてもらった戸村教授に


「僕が出ます」


と言ってドアの前に行った。


「お兄ちゃんいるー?」


ドアの先で弔の聞き慣れた声が聞こえた。


今年で高校1年生になる妹だ。

兄妹関係は悪くなくむしろ良好だ。

現にこうして週に一度大学の寮に会いに来てくれる。

だが・・・


「お兄ちゃん〜」


いきなり抱きついてくるのは困りものだ。

弔は焦りながら


「葵・・・お前もう高校1年生なんだ・・・そのブラコンさは嬉しいけど・・・少しは抑えてくれ・・・」


葵は抱きついたまま「大丈夫!ノゲ◯ラとか俺◯イルとかブラコンでも許されるアニメいっぱいあるからセーフだよ!」


そう葵は見ての通りアニメオタクだ。

弔は呆れながら


「嫌・・・ダメだから・・・色々とアウトだから・・・」


すると後ろから教授が割って入ってきた。


「ハハハ、どうやら今からは兄妹水入らずで過ごしたいようだね」

弔は慌てた。


このまま帰ってもらっては困るまだ見てもらいたい原稿が沢山あるのだ。


「教授・・・これは違・・・」

そこまで言いかけて葵が口を挟んだ。


「はい!お兄ちゃんの原稿は私が見ておきます!」

葵が恐ろしいことを言った。


いや弔にとって恐ろしいことなのだが。

教授は葵の話を聞いて弔がなにかを言う前に去ってしまった。


今日もまたこんな起承転結な日常が終わろうとしている。

外はもうかなり暗くなっていた。

どうやら人と言うのは痛い過去も記憶も「日常」と言う壁に穴を開けられなければ普段は笑って過ごせるそう言う生き物のようだ。

少なくとも自分たちはそうだ。


3年前の連続殺人事件の現場にいて無残な死体を幾度と見たはずなのに今はもう普通の日常を過ごしている。


3年前の事実を小説のネタにするくらい平凡な日常を

弔はもう一度机に向かって執筆を続けた。


それと同時に弔は3年前の都市伝説に別れを告げた。





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