第26話 監禁純愛物語

 あるところに、施錠まわりの道具を販売している防犯グッズ屋の娘がいた。名を斎藤らんという。斎藤らんは、美少女を飼育してその様子を観察したいという欲求にかられて大学時代をすごしており、目をつけた少女である女子中学生を狙っていた。

 秘かに三か月間、女子中学生を尾行し、行動周期を把握した斎藤らんは、自動車に女子中学生を無理矢理連れ込んで、誘拐した。

 女子大生斎藤らんによる女子中学生監禁事件の発生である。誘拐された女子中学生は、あまりにも想像を超えた事態に対応できず、そのままマンションの一室に監禁されてしまった。

 女子中学生が驚いたことには、監禁部屋にはすでにもう一人の少女が監禁されており、もう半年も逃げ出せないということだった。

「半年も逃げ出せないんだ」

「うん。でも、絶対にあきらめないよ、わたし」

 監禁された二人の女子中学生は、お互いに励ましあって希望を見出した。

 女子大生斎藤らんは、当然のように性的な要求をしてきて、二人の女子中学生にiPS細胞の技術を導入して、同性なのに体外受精で子供を作ってしまうという、ことばにするのも凄惨な暴挙に及んでいた。iPS細胞でできた監禁犯との子供は、生まれたばかりの嬰児なのに、育てるのに手間がかかるとしてゴミ袋にいれて箱の中にしまわれた。そのまま八年がたった。二人の女子中学生はそれぞれ七回もの数のiPS細胞を作って体外受精して、嬰児を捨てられていた。このまま監禁されたまま人生を終えるのだろうか。二人はそれでも励ましあって、決して希望を捨てなかった。

 二人があきらめかけた頃、幸運にも、斎藤らんの方がへまをして女性を監禁していることがバレてしまい、警察に逮捕された。やっと、二人は八年目にして外の世界に帰っていくことができたのだ。

 斎藤らんは警察に動機を聞かれ、「愛していた」と答えた。そんな愛などあるものか。警察は斎藤らんを疑い、問い詰めた。「二人の女性を同時に愛していたのですか」。斎藤らんははっきりと答えた。「そうです」。

 世間にこのことが報道されると、人々は口々に「純愛だろ?」とうわさし合った。三か月もの求愛に答えて、行為に及んでしまった。八年間も育てあげるという献身。それは純愛以外の何物でもなかった。

 今では二十二歳になった二人の女性は、「こんな犯罪が純愛であってたまるか」と反論した。

 斎藤らんはいう。

「でもね、これは本当に愛ゆえに行ったことなんだよ。二人を愛しているんだ。わたしは宇宙の創造神なのよ。愛そのものなの」

 二人は泣いた。泣いた。神による監禁というあまりにもひどい残酷な世界。失われた若い時代の自由。失われた青春。それが、純愛だなどという言い草に負けて許されてしまうのか。

「わたしたちは神の愛を受け入れない。わたしたち二人の間には愛より強い思いがある。八年間、監禁される中で慰め合ってきた友情が。それは愛より強い。神の愛より強い」

 二人の友情は本物だった。愛の神である斎藤らんは負けて滅び、宇宙は消し飛んで消えた。監禁されていた少女二人の愛より純粋な感情が残り、いつまでもいつまでも寄り添いつづけた。

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