火星旅行

 この前の日曜日、私は火星に行ってきた。



 観光星として一般に航行が解禁されてかなりの年月が経っている割には尋常の混み具合ではなかった。

 特別天然記念物に指定されているカセイジンは見られなかったが――何しろ火星生物園の入場予約が火星二公転先まで入っていたのだ――旧友と再会することができた。

 彼は火星の燃料保存部の担当部長をしている。

 「地球の二の舞にはなりたくないからね」彼は笑いながら話した。

 「今ここにこれだけの都市開発がみられるのも、錬金術の発達によるものなんだ、物質を変える事によってエネルギーの完全再利用が可能になっている。科学の発達のお陰だな」



 往路では太陽の陰になって見えなかった地球の姿を、復路では見ることができた。

 宇宙から撮られた地球はさんざん見ているから分かっているはずなのに、改めて青く輝く巨大な円盤とそれを支える「神の像」を見たとき、感動で涙がこぼれ落ちそうになった。

 私たちは今こうして宇宙に飛び出しているからこそ地球が平らであることは分かるが、私たちよりもずっと昔の人々が緻密な計算と観測でそれを証明したと思いをいたすと敬意を表したくなる。



 彼はこんな事も言っていた。「まだ秘密だけどね、今天国に行くルートも開発されているんだ」

 宇宙船で天国へ観光旅行できる日が来るのはそう遠くないことだと、彼はにこにこしながら計画の図面を私に見せて言った。

 地球が丸いなどと唱えていた無知と偏見の人々に、このような未来が想像できていただろうか。

 私たちの科学技術に感謝しながら、私は地上に降り立った。

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