2014/9/28 Sun. - 3

――頃合い、じゃの。


 遊ちゃんの声が聞こえたかと思うや、乃々と藍華の姿は消え、あの粗いポリゴンの世界で、銀路は中空に浮いて遊ちゃんと向かい合っていた。


「さて、クリアしたのぉ……今の心境はどうじゃ?」

「勿論、嬉しいよ。確かに俺は『げえむ』をクリアした。『撃避 ShooTinG 』を自力でクリアする必要はない。藍華姉と乃々をこの場に導いたことで、勝利条件は満たしていた、ということだろう?」


 笑顔は零れる。

 確かに、喜んでいる。


 これでよかったのだ。


 そんなことを確認しながら、銀路は理屈を述べる。


「その通りじゃ。乃々と藍華の協力を得ることに成功したのじゃから、それも含めて主の力であろう。むしろ主にしかできなかったことじゃ。この筐体に向かうのは最後の仕上げ。そこに至るまでのすべてが『げえむ』。ゆえに、クリアと認めよう」

「だよな」


 電子遊戯神のクリアのお墨つきに安心する。『撃避 ShooTinG 』の自力クリアはオプションだ。これでよかったのだ。


 努力と根性で試行錯誤。『撃避 ShooTinG 』も最初はプレイしたし、道中で藍華と乃々の二人を協力者ヒロインとするために行った。


 なら、問題ない。

 己の流儀には反しない。


「これでよかったのだ、と言ったところかの」


 遊ちゃんがわざわざ口にしたことで、どうしてそんな言葉が何度も頭をよぎったのか、銀路は思い出した。


 これは、銀路がクリアして見せた『デススマイルズ』からの引用だ。

 銀路が使用していた巨乳眼鏡っ娘フォレットのエンディング。


 産まれた世界へ帰るチャンスを捨て、異世界で共に育った姉妹達との生活を選んだことを後悔しないという、前向きな思いが込められている言葉。


 銀路も確実なクリアを選んだ己の判断を後悔しない。


「ああ、これでよかったんだ」


 己の言葉で口にする。


「ほほ、では、クリアの報酬を与えよう」


 そうして、遊ちゃんの姿は曖昧なポリゴンへと溶け消え、


「主が望んだ未来、切り拓かれようぞ」


 虚空から聞こえた言葉と共に、銀路の意識はスーッと闇に落ちていった。


ROUTE3 : ROUTE OF AIKA AND NONO OR HAREM ROUTE ENDED.

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