2014/9/28 Sun. - 3
「ふむ、ダメじゃったの……では、反省会じゃ」
そう言って、遊ちゃんが銀路の肩を叩くと、銀路と遊ちゃんだけの時空間となる。
「遊ちゃん、あれは酷いだろう」
銀路は真っ先に抗議の声を上げる。
「まぁ、乃々とやらにはいじめに思えたじゃろうな」
「そうだろう。俺だってそう思う。あんなの倒せる奴なんて……」
いない、と言いかけて、銀路は口をつぐむ。
「いないのかえ?」
恐らく、遊ちゃんは解っていて問いかける。
「……いる。それも、身近に。藍華姉なら、たぶん三回ぐらいやれば倒せるはず」
ある程度運の要素も絡むので初見でとは言わないが、藍華の気合いがあればそれぐらいで十分だと銀路は見積もる。
「そうじゃろうとも。なら、無理ゲーではなかろう?」
「でも、藍華姉だとあそこまで制限時間内に辿りつけないから、結局無理ゲーだろう?」
「そうかの? 主は、何か勘違いをしておるのではないか?」
「だって、藍華姉を選んでも真城を選んでも、結果はクリア不能だった。俺の周りに他に共感してくれる友人はいそうにないし、いたとしても、藍華姉並の気合い避けと真城並のパターン化の能力を兼ね備えていることまで期待するなんて、いくらなんでもご都合主義がすぎる」
「そりゃそうじゃ」
楽しげに、どこか意地の悪い表情を浮かべてカラカラと遊ちゃんは笑う。
「じゃから、勘違いじゃと言っておるのじゃ。そもそもの、銀路よ。我がいつ、
銀路は虚を突かれた。
「道中はギャルゲーじゃ。通常はヒロイン一人ずつを攻略することになるが、ゲームによっては存在するじゃろう? 俗に言う、ハーレムエンドというものがの」
「ハーレム、エンド」
複数のヒロインと同時に結ばれるエンドだ。確かに少なからずそういうエンディングが用意されたゲームが存在することを銀路は知っている。
以前、母に勧められてプレイしたPCエンジンの『卒業 -Graduation- 』というゲームで、教師の主人公がヒロインの五人の教え子全員と結ばれて畜生以下の烙印を押されるというエンディングを見たことがあった。
そんなことを思い出しながら、銀路は何となく遊ちゃんの言いたいことを察する。
「もしかして、藍華姉と真城、二人をここへ連れてくればいい、ってことか?」
「ほほ、少し親切すぎたかの。じゃがまぁ、ここまで試行錯誤すればそれしかないことは解るじゃろうて」
公式に与えられる情報の範囲内、と銀路は理解することにする。
「次は藍華姉と真城の二人をここへ連れて来いってことか」
二人をどうにか引き合わせて、共に銀路の側にいる状態。そんなルートを目指す。
「さて、では分岐点はどうするかの?」
「それは……」
銀路は思い返す。
最初に追加した分岐点。
藍華にゲームセンターの魔女の存在を隠すのは、変えてはダメだろう。あのタイミングでは、乃々が離脱する最初と同じ結果になる。
他に藍華と乃々が出会う可能性を生み出す場面はあっただろうか?
「あのとき、か」
藍華から笑わない魔女の様子を尋ねられたあのとき。
思わず隠してしまったが、あそこで本当のことを喋っていればどうなっただろう?
遅かれ早かれ、藍華は乃々に何かしらのアクションを起こすだろう。
だけど、あの時点では既にゲームセンターの魔女が乃々であることを銀路は理解している。それならば、最初のときのように二度と会えないということにはならないはずだ。
「決めたよ」
「そうか、これで残機はゼロじゃが、大丈夫かの?」
「大丈夫だ。ここまでヒントを示されてクリアできないはずはないから」
「なら、いいかの。では、戻り復活じゃ」
遊ちゃんの言葉と共に、銀路の意識はスーッと闇に落ちていった。
ROUTE2 : ROUTE OF NONO ENDED.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます