2014/9/22 Mon. - 1

「おはよう」


 乃々へ挨拶し、


「おはよう」


 乃々から挨拶が返ってくる。

 銀路と乃々にとってパターン化した朝の風景だ。


 だが、それ以上は深入りしない。

 挨拶を交わせば、後はただのクラスメートとしてすごす。

 昨日の約束を遵守する。


 そうして、放課後を迎えてからが、乃々との時間だ。


 少し浮かれ気味に帰宅しようとした銀路だったのだが、


「銀くん、少し時間をもらえないか?」


 一階の廊下で藍華に捕まり、また屋上扉前へと連れてこられてしまった。


「なぁ、銀くん。その後、真城さんに何か変わったことはないか? あれば教えて欲しい」


 いつになく真剣に聞いてくる。それだけ乃々のことを心配しているのだろう。

 しかし、乃々と約束したのだ。秘密だと。


「いいや、特にはないよ。挨拶を交わす程度だ」


 銀路は嘘を吐いて誤魔化す。


「……そっか。なら、いいんだけどな……じゃぁ、あたしは生徒会へ行くよ」


 残念そうにそれだけ言って、藍華は階段を下り始める。


「お仕事頑張って」


 いつも通りにヒラヒラと手を振って見送ると、軽く手を上げて返されるだけだった。


 前のゲーセン帰りに続いて、また藍華に嘘を吐いてしまったことが後ろめたかった。


 だけど、乃々と友達でいるためには必要な嘘なのだ。


 心にチクリと刺さるような痛みは隠して、銀路は階段を下っていく。

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