2014/9/28 Sun. - 4
落胆する銀路の肩を遊ちゃんがポンと叩く。
すると、藍華の姿が消え、遊ちゃんと銀路二人だけがあのポリゴンで構成された異界へと移動する。
「情けない結果じゃのう。まさか、一面もクリアできんとは」
「仕方ないだろう。俺はゲームの達人じゃない。努力と根性で泥臭く、試行錯誤の末にクリアするタイプだ。藍華姉も気合いでなんでもクリアするけど、ああいうゲームには不向きだ」
「勿論、承知の上じゃ。実のところ、この結果も想定通りじゃしの」
「それって、クリアさせる気がなかったってこと?」
だとすれば、銀路はまんまと神に一杯食わされたことになってしまう。
「焦るでない。我はこれで終わりとは一言も言っておらんじゃろう?」
「え? でも、クリアに失敗して……」
「うむ。じゃが、これで終わりでは主の得意の試行錯誤ができんじゃろう? じゃから、これはあくまで一ミス。まだ、チャンスはある」
ハッとした銀路に、ニタリ、と笑んで遊ちゃんは続ける。
「『げえむ』は残機制、ということじゃ。伝統に則って初期の残機は二機の全三機設定。要するに、あと二回はチャンスがある」
ゲームなら残機という概念は定番だ。
まだチャンスがあることに、萎えそうになった気持ちを立て直す。
銀路が再びやる気を出したのを感じ取ったのか、遊ちゃんは一つ頷いて言葉を続ける。
「残機を失えば『げえむ』の開始時点、九月十三日の朝からやり直しとなる」
「過去へ遡るってこと?」
「そうじゃ。そして、過去に遡るということは、今回の道中の記憶は未来の記憶ということになる。じゃから、道中の記憶はリセットじゃ。まぁ、シューティングゲーム風に表現すれば、『
「理屈は解るけど……でも、記憶を失ってしまったら試行錯誤にならないから、同じ事を繰り返してしまうんじゃないか?」
遊ちゃんの言葉に納得はいくが、前回のプレイを反省して次に繋げるのが試行錯誤だ。記憶を失っては毎回初見と同じと言うことになってしまう。
「ただ戻るだけならそうじゃろうの。だが、そこは考えておる。戻る際に、一つだけ主に選択肢を追加する権利を与えよう」
遊ちゃんの言葉が理解できず、銀路は首を傾げる。
「戻り復活後のルートでは、主が選んだ分岐点で別の選択肢を選ぶことができる、ということじゃ。要するに、今回の道中を思い返して、あのときこうすれば……という部分を一箇所だけ確実にやり直せる、ということじゃな」
言われて、銀路の頭に浮かぶ明確な分岐点があった。
「それなら……あのとき、藍華姉を誤魔化せていれば……」
ゲームセンター帰り、学校帰りの藍華に詮索されたときだ。
あそこで上手く振る舞えば、翌日の藍華の乱入を防げたのでは?
そうすれば、違う未来があったのでは?
アドベンチャーゲームの要領で、銀路は選択肢の影響に対する想像力を働かせる。
「了解じゃ。次のルートでは、主は新たな選択肢を選ぶじゃろう。そこから異なるルートへと繋がっていくのじゃ」
「本当に、できるのか?」
「勿論じゃ。『げえむ』は我の
ニタリ、と笑う。
「ならば、戻り復活じゃ」
その言葉を合図に、銀路の意識はスーっと闇に落ちていく……
ROUTE1 : ROUTE OF AIKA OR NORMAL ROUTE ENDED.
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